目次
【概要】
心不全はしばしば心室内伝導障害, 房室間同期不全, 心室内同期不全, 心室間同期不全を合併し, CRT(Cardiac Resynchronization Therapy)は同期不全を解消し, 心不全悪化を防止あるいは心機能向上に寄与する. 特に左脚ブロックによる心室中隔および左室自由壁の興奮伝播の差により収縮の同期性が不均一になる(dys-synchrony)のを改善させる.
NYHAⅡ度以上の, LVEFの低下したQRS 120-150msec以上のCLBBB症例に有効である.
洞調律か心房細動(AF)かも重要で, 心房細動では房室伝導が亢進してHR↑になると両室ペーシングの頻度が減少してしまう.
→AF患者でも高い両室ペーシングが得られるなら有効である.
【CRT non-responderの存在】
CRT植込みを行ってもCRTの効果が十分でないnon-responderが存在しているが, 要因としては以下のものが考えられる
①患者背景
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NYHAⅣの患者では心不全に対する効果が弱い.
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心不全の罹患期間が長いとCRTの反応性が悪い.
→心筋が線維化してしまったら不可逆. 心筋細胞が線維組織に置き換わる前に早期に導入すべき
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CLBBBのみCRTの有用性が示されている.
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QRS幅が120msec以上でも協調運動が保たれている症例が3割程度存在する.
②植込み時の要因
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LVリードを心尖部に置くと反応が悪くなる, 収縮遅延部位に正確に置くのが一番効果的
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LVリードとRVリードの距離が長いほうが効果高い.
③植込み後の要因
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不適切なAV間隔でのペーシング
→心エコーの僧帽弁流入波形で評価するのが一般的.
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AFやPVCなどの不整脈に伴い, 十分なペーシングができないことが原因
【適応】

※mid-range QRS(QRS 120-149msec)の場合
日本では体格が小さいため, 小柄な女性などではCRTの有益性が有意に高かった.
身長で修正したQRS幅がCRTの有効性と強く相関すると考えられる.
dyssynchronyがあるからといって有効なわけではない.
心不全を伴うペースメーカー植え込み適応例(Blocked HF)に対するCRT
心機能が低下した症例で徐脈に対してペースメーカーが適応となる場合, 右室ペーシングでは心房細動や心不全発症が増加することが報告されている.
→心機能が低下(LVEF<50%)し, 心室ペーシングが新規に必要な場合はCRTが考慮される.

※既存のペースメーカーやICDを有している患者では, LVEF≦35%・心不全増悪・右室ペーシング依存の3つを満たす場合にのみCRT upgradeが考慮される.
AF患者におけるCRT適応
AF患者においてCRTの有効性が示されにくい理由としては房室間の同期性を回復させられないこと, 房室伝導が亢進して頻拍になると両心室ペーシング率が低下することが挙げられる.
両室ペーシング率は98%以上が推奨されており, 頻脈性AFにより高いペーシング率が維持できない場合は房室伝導を抑制することが重要であり, 薬物治療で不十分な場合は房室結節アブレーションやAFに対するアブレーションが検討される.

【CRT-Dについて】
心臓突然死の観点ではCRT-DのほうがCRT-Pよりも優れているが, 総死亡率においては有意差が認められていない.
欧州→良好な身体機能が1年以上期待できる場合とされている.
ICD機能の必要性, 患者の状況・病態(年齢, 性別, 心不全重症度, 余命, 虚血の有無, 腎機能, 合併疾患, フレイルなど)を考慮した上で選択する必要がある.
植込みに伴うデバイス感染はCRT-Dのほうが多いとの報告もある.
☆COMPANION試験
NYHA Ⅲ, Ⅳで心不全治療を十分に受けているQRS≧120msecのsinusのHFrEF(LVEF≦35%)
CRT-D群, CRT-P群, 薬物治療群では突然死の減少率はCRT-D群が有意であった.
これでもCRTを用いても突然死は防ぎきれないという結果であった.
【参考文献】
●JCS 不整脈非薬物治療ガイドライン(2018)
●JCS 心不全診療ガイドライン(2025)
●草野研吾(2018)『不整脈デバイス治療バイブル-適応・治療・管理まですべてマスター-』南江堂
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