救急関連

酸素療法

概要

酸素療法の目的は低酸素血症の改善, 肺血管抵抗の減少にある.
酸素療法の適応はSpO2<90%(PaO2<60mmHg)
基本目標:SpO2 92~96%(Ⅱ型呼吸不全のリスクがある場合はSpO2 88~92%)
制限のないO2投与は容量依存的に死亡率増加→SpO2を96%より高値のまま放置しない.
AMI, 急性動脈閉塞などの局所の血流が低下した場合はSaO2に関わらず酸素療法を行う.
急性心不全の場合も心拍出量の低下があるため, 酸素療法を開始する.

方法

低流量システムと高流量システムがある.
☆低流量システム
患者の吸入する空気の一部に酸素を加えて, 吸入酸素濃度を上昇させる.
また, 呼気の多くが再吸収されてしまうため, CO2ナルコーシスのリスクがある.
☆高流量システム
吸気速度よりもはやい速度で送気されているため, 送気ガスがそのまま吸入される.
→実際に吸入されるガスの酸素濃度は設定酸素濃度に等しい.
また, 呼気はそのまま送気ガスに押し出されるため, CO2の排出に優れている.

低流量システム

①鼻カニューレ:O2 1~4L(FiO2=20+4x)
口呼吸だと効果△
4L/min以上の場合は加湿した方が良い.
6L/min以上ではFiO2の上昇は期待できない.
②簡易酸素マスク:O2 5~10L(FiO2=10x−10)
5L/min以上で使用することが多い.
5L/min以下だとマスク内に呼気が溜まりやすく, CO2のクリアランスが低下する.
③リザーバー付酸素マスク:O2 10~15L(FiO2=10x)
6L/min以上で使用することが多い.
呼気を再度吸入するため, CO2ナルコーシスになりやすい.
※再吸入を防ぐために, 出口に一方向弁を取り付けたものもある.

高流量システム

換気補助が必要かどうかの指標→RR(25回/minを超えるようなら補助が必要)
<ベンチュリーマスク>
ベンチュリー現象を利用して高流量の酸素投与が可能.
※ベンチュリー現象:細い筒に酸素を通すと、流量と筒の径に応じて一定量の空気をまわりから引き込む現象.
 →純酸素に一定量の空気を混合し、任意の酸素濃度の混合ガスを作る.
ダイリューターに記載している濃度および流量どおりに酸素投与可能.
FiO2を高くすると早期速度が低下してしまうため, 高流量型にならない→下の図の赤のところが高流量になっているところ.
→健常人の安静時の呼吸速度が30L/minであり, 少なくとも送気ガス量が30L/minになるように酸素流速とFiO2を設定する.
インスピロンネブライザー型:加湿可能である. 室内気の導管の口径を調整することで流入する室内気の量を調整する.
アキュロックス型:システムが小さいため, 移動も容易. 純酸素と室内気の合流部の口径を調整することで, 流入する室内気の量を調整する.
<ネブライザー付酸素吸入装置>
ベンチュリー現象を利用して高流量の酸素投与が可能.
ダイリューターに記載している濃度および流量どおりに酸素投与可能.
適応:気管切開患者(加湿した酸素投与を目的とする)
<HFNC(high-flow nasal connula)>
鼻カニューレから加温・加湿された高濃度・高流量(30~60L/min)の酸素投与を行う.
この流量では, 一度呼出した空気は再度吸入されることがないため, 実際に吸入されるガスのFiO2は0.21~1.0まで設定できる.
鼻腔内から高い流量で送気されたガスは上咽頭から中咽頭まで到達するため, 死腔を減少させるだけでなく, 咽頭部分を陽圧にすることで一定のPEEPをかけることができる(口を閉じた状態だと4mmH2O程度)
●効果
解剖学的死腔を減らす→PaCO2↓
高いFiO2→PaO2↑
高い流量のため, CPAPと同様の効果→PEEP+
無気肺の減少
呼吸仕事量の減少
水分, 食事摂取も可能
●適応
低流量酸素療法で改善しないⅠ型呼吸不全
抜管後呼吸不全
肺水腫, 急性心不全
COPD, COPDの急性増悪, 肺炎
ARDS
気管支喘息
急性肺損傷
●使用方法
比較的安定している患者であれば送気流量を30L/minから開始し, 問題なければ40L/minまで増加させ, その後維持する.
送気流量は努力様呼吸, 呼吸回数が多い場合は60L/minまで増量することができる.
FiO2=0.4から開始し, SaO2≧90%になるように調整する. 
初期設定:送気流量30L/min, FiO2 0.4

非侵襲的陽圧換気法(NPPV)=非侵襲的人工呼吸(NIV)

NPPV:non-invasive positive pressure ventilation, NIV:non-invasive ventilation
鼻や口, 顔全体などにつけるマスクなどによって陽圧換気を行う人工呼吸法であり,  CPAP(continuous positive airway pressure)とBIPAP(Bilevel positive airway pressure)がある.
患者の忍容性や同調性の向上にはマスクのフィッティングが大事である.
状態がひどくなければCPAP 4mmHgから行う. (CS1で呼吸不全が切迫している場合は10 mmHg)
●適応
急性呼吸不全, RR≧24/min, 呼吸補助筋の使用, 奇異性呼吸障害, PaCO2>45Torr, pH<7.35, PaO2/FiO2<200
急性期→心原性肺水腫, COPD急性増悪, 免疫不全に合併した呼吸不全など
慢性期→肥満低換気症候群, SASなど
急性期
慢性期
Evidence強
・心原性肺水腫
・COPD急性増悪
・免疫不全に合併した呼吸不全
・肥満低換気症候群
・睡眠時無呼吸症候群
・術後の呼吸不全
・術後の呼吸サポート
・気管支喘息
・神経筋疾患
・CHFのチェーンストークス呼吸
Evidence弱
・上気道閉塞
・ARDS
・外傷
・肥満による低換気
・COPD
・拘束性換気障害
<CPAP>
持続的に陽圧になっており, 吸気呼気を通じて一定にPEEPをかけ, 肺胞をしっかり広げて酸素化を補助する.
換気補助はなく, 無呼吸のバックアップもなし
適応:AHF, SAS
設定項目:CPAP, FiO2
初期設定:PEEP 4 mmHg, FiO2 100%
<BIPAP>
pontaneous/timed(S/T)と同じ意味と考えてOK
CPAPではPEEPのみであるが, BIPAPではこれに加えて吸気時に更なる補助圧がかかる.
呼吸回数を設定することができるので, 自発呼吸が弱くなった時にも使用可能. 無呼吸のバックアップあり.
人工呼吸におけるPSVと同じ. 呼気時→EPAP=PEEP, 吸気時→IPAP=PEEP+PS
設定項目:IPAP, EPAP, 呼吸回数, 呼気時間, FiO2
初期設定:EPAP 5mmHg IPAP 10mmHg FiO2 100%
※SpO2, 1回換気量, 分時換気量を確認し, 酸素濃度およびIPAPを減量させる.

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