ACE阻害薬

ACE阻害薬とは?

ACE阻害薬(Angiotensin-Converting Enzyme inhibitor:ACE-I)は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害することでレニン・アンジオテンシン系(RAS)を抑制する薬剤。

高血圧だけでなく、特にHFrEFにおいて生命予後改善のエビデンスを持つ重要な薬剤。

ACE阻害薬はどこに作用する?

レニン・アンジオテンシン系は、
アンジオテンシノーゲン
↓ レニン
アンジオテンシンI
↓ ACE
アンジオテンシンII
↓
AT1受容体
という経路で作用します。

ACE阻害薬は、アンジオテンシンI → アンジオテンシンIIへの変換を抑制します。
その結果、

  • 血管収縮 ↓
  • アルドステロン分泌 ↓
  • Na・水分貯留 ↓
  • 交感神経活性 ↓
  • 心筋肥大・線維化 ↓

などの作用が得られます。
つまり単なる降圧薬ではなく、心臓・血管のリモデリングを抑制する薬剤というところが重要です。

ARBとの違いは?

ARBがアンジオテンシンIIのAT1受容体を直接ブロックするのに対して、ACE阻害薬はその上流でアンジオテンシンIIの産生を抑制します。

もう一つ重要なのがブラジキニンです。

ACE(kininase II)はブラジキニンを分解する働きも持っています。そのためACEを阻害すると、

ブラジキニン分解↓ → ブラジキニン↑

となります。

ブラジキニン増加は血管拡張作用に関与する一方で、ACE阻害薬に特徴的な空咳や血管浮腫にも関係します。

したがって、

ACE阻害薬で空咳が問題になる → ARBへの変更を検討

というのは、実臨床で非常によくある使い分けです。

覚えておくべきACE阻害薬:エナラプリル レニベースⓇ

エナラプリルはACE阻害薬を代表する薬剤です。

高血圧症、慢性心不全に対して適応がある。

用量

高血圧症→1回5-10mg 1日1回で投与

※腎性・腎血管性高血圧症や悪性高血圧では2.5mgから開始することが望ましい

慢性心不全→1回5-10mg 1日1回で投与

※腎障害を伴う患者や利尿薬投与中では2.5mgから開始することが望ましい

心不全患者では低血圧や腎機能悪化を避けるため、少量から開始して忍容性を確認しながら増量することが重要です。

副作用・注意点

ACE阻害薬を使うときには、特に

空咳・高K血症・腎機能悪化・低血圧・血管浮腫

を覚えておきます。

① 空咳

ACE阻害薬に特徴的な副作用です。

ACE阻害によってブラジキニンの分解が抑制されることが関与すると考えられています。

感染症や心不全による咳と間違えないことも重要です。

ACE阻害薬開始後に原因不明の乾性咳嗽が続く場合には、

ACE-Iによる咳?

と考えます。

症状が問題になる場合は、ARBへの変更が選択肢になります。

② 高カリウム血症

RASを抑制するとアルドステロン分泌が低下するため、K値が上昇することがあります。

特に、CKD・MRA併用・K製剤使用・高齢者などでは注意が必要です。

HFrEFではACE阻害薬+MRAを使用することも多いため、K値と腎機能のフォローが重要になります。

③ 腎機能悪化

ACE阻害薬は輸出細動脈を拡張させ、糸球体内圧を低下させます。

そのため、開始・増量後にCrが上昇することがあります。

特に、脱水・過度な利尿・NSAIDs併用・腎動脈狭窄などでは注意します。

したがってACE阻害薬を開始・増量したら、

BP + Cr/eGFR + K

を確認するのが基本です。

④ 血管浮腫

頻度は低いものの、見逃してはいけない重大な副作用です。

顔面、口唇、舌、咽頭などの腫脹を認め、気道閉塞につながる可能性があります。

ACE阻害薬などによる血管性浮腫の既往がある患者ではエナラプリルは禁忌です。

ACE阻害薬からARNIへ変更するときは要注意

ここは循環器診療では特に重要です。

ACE阻害薬からサクビトリル/バルサルタン(ARNI)へ切り替える際には、ACE阻害薬中止後36時間以上の間隔を空けます。

ACE阻害薬とネプリライシン阻害を重ねるとブラジキニンなどが過剰に蓄積し、血管浮腫のリスクが上昇するためです。

したがって、

ACE-I → 36時間以上空ける → ARNI

と覚えておくとよいでしょう。

※ARBからARNIへの変更ではACE阻害薬と同様の36時間washoutは必要なし

妊娠中は禁忌

ACE阻害薬は、ARBと同様に妊婦または妊娠している可能性のある女性には使用できません。

胎児の腎機能障害、羊水過少などを引き起こす可能性があるためです。

周術期はどうする?

ACE阻害薬投与中では、麻酔・手術中にRAS抑制による低血圧が問題となることがあります。

エナラプリルの添付文書には、

「手術前24時間は投与しないことが望ましい」

と記載されています。

まとめ

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nomomedic
循環器内科医 / 不整脈専門。 カテーテルアブレーションやCIED診療を中心に循環器診療に携わっています。 研修医・医学生・若手の先生が少しでも循環器のことに興味を持ってもらえたら幸いです。