ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)

概要

  • 選択的アルドステロン阻害薬であり, アルドステロンの作用を低下させる.
  • 遠位尿細管~集合管にある鉱質コルチコイド受容体(MR)へのアルドステロンの結合を阻害し, Na再吸収を抑制(Na利尿)し, K排泄を抑制(K保持)する=K保持性利尿薬(利尿効果は弱い)
  • ループ利尿薬使用時の低K血症予防のために併用利尿薬として使用されることが多い.
  • 利尿薬としてだけでなく, Ca拮抗薬, RAS阻害薬, 利尿薬で効かない高血圧症に使用することもある.
  • eGFR<30ml/min/1.73m2もしくはK≧5mEq/Lの場合は慎重に投与すること.

 

心不全治療における推奨度

☆HFrEF

NYHA Ⅱ~ⅣのHFrEF患者に対してMRA(スピロノラクトン, エプレレノン)を投与する(classⅠ).

☆HFpEF/HFmrEF
症候性のHFpEF/HFmrEFに対して, 心血管死または心不全増悪イベントの抑制を目的にMRA(フィネレノン)の投与を考慮する(classⅡa).
症候性のHFpEF/HFmrEFに対して, 心血管死または心不全増悪イベントの抑制を目的にMRA(スピロノラクトン, エプレレノン)の投与を考慮してもよい(classⅡb).

種類

■スピロノラクトン アルダクトンAⓇ
K製剤内服中でも処方可能.
副作用:女性化乳房

用量:アルダクトンAⓇ 1回25mg 1日1回 最大100mg

■エプレレノン セララⓇ
エプレレノンはスピロノラクトンよりもよりMRへの選択性が高く, 女性化乳房の副作用が少ない.
→若年男性の心不全にはこっちがおすすめ
セララ50mgでスピロノラクトン25mgに相当する.
禁忌:腎機能障害(Ccr<30mL/min), K製剤内服中
用量:高血圧症→セララⓇ 1回50mg 1日1回から開始 最大100mg
   慢性心不全→セララⓇ 1回25mg 1日1回 最大50mg
※CCr 30~50では25mg 1日1回隔日から開始し, K値・患者状態に応じて4週間以降に1日1回25mgに増量. 最大25mg/day

※定期的にKを測定すること.

〇カンレノ酸カリウム ソルダクトンⓇ

用量:ソルダクトンⓇ 1回200mgを生食20mLに溶解して, 緩徐に(1時間かけて)点滴静注

■エサキセレノン ミネブロⓇ
MR受容体に高い選択性と強い結合力を有している.
降圧作用が強い.
適応:高血圧症のみ

用量:ミネブロⓇ 1回2.5mg 1日1回 最大5mg

■フェネレノン ケレンディアⓇ
他のMR拮抗薬と比べて血圧が下がりにくい.
蛋白尿を認める場合に使用可.
適応:2型糖尿病を合併する慢性腎臓病
用量:ケレンディアⓇ 1回20mg 1日1回で開始(eGFR 25~60では10mgで開始し, 4週間後を目安に20mgに増量)
※K値に応じて対応
K≦4.8mEq/L→20mg 1日1回では維持. 10mg 1日1回のときは20mgに増量(wGFRが30%を超えて低下していない場合に限る)
K 4.8~5.5mEq/L→維持

K≧5.5mEq/L→中止

Evidence

☆RALES試験
NYHAⅢ~Ⅳの重症心不全において, スピロノラクトン投与群では心不全・突然死リスクが低下し, 死亡率も低下. 重症度の改善も認めた.

 

☆EPHESUS試験
LVEF低下・心不全合併の急性心筋梗塞において, エプレレノン投与群では死亡率・心血管イベントによる入院を低下させた.

 

☆FIDELIO-DKD試験
2型糖尿病を伴うCKDで持続性アルブミン尿の中等度上昇(尿中Alb/Cr 30-300mg/g)かつeGFR 25~75ml/min/1.73m2の患者でフィネレノンは心血管複合エンドポイントの発生率を減少させた.

☆FIGARO-DKD試験

2型糖尿病を伴うCKDで持続性アルブミン尿の中等度上昇かつeGFR 25~90ml/min/1.73m2, または持続性アルブミン尿の高度上昇かつeGFR 60ml/min/1.73m2以上の患者で, フィネレノンによる心不全入院の抑制が示された.

【参考文献】

●JCS 心不全診療ガイドライン(2025)

【更新日】2025/10/21

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nomomedic
2021年に大学を卒業し, 現在は循環器内科医として働いています. 学生時代は循環器が苦手でしたが, 初期研修先の先生にあこがれて循環器内科医になりました. 循環器が苦手な人が少しでも楽しく思えるようなサイトにしたいと思っています.