冠動脈評価

【AHA(American Heart Association)分類】

冠動脈造影で得られた画像から狭窄病変を表現する方法で, 病変の局在を15のsegmentに分割して表現し, 狭窄の程度を0~100%の7段階に分けて評価.
冠動脈の走行や分枝にはバリエーションも多く, RCAが発達していて#15がない場合やLCAが発達していて#3以降が定義できない場合もある.
#1:1番 or セグメント1
RCA
#1:入口部から鋭縁枝(AM:acute marginal)分岐までの間を2等分した近位側. 通常は右室枝(RV)があり, それを代用する.
#2:入口部から鋭縁枝(AM)分岐までの間を2等分した遠位側. RVからAMまで.
#3:鋭縁枝(AM)から後下行枝(PD)と房室結節枝(AV)の分岐部まで
#4:後下行枝(PD)と房室結節枝(AV)の分岐部より末梢. それぞれ#4PD, #4AVと表現する.
LMT
#5:左冠動脈(LCA)入口部から左前下行枝(LAD)と左回旋枝(LCx)の分岐部まで
LAD
#6:LCxが分岐した後から第一中隔枝(1st Major Spetal Branch)分岐部まで
#7:1st SB分岐部から第二対角枝(D2:Second Diagonal)分岐部まで. D2がわからない場合は1st SBから先端までの間を2等分した近位側
#8:D2分岐部から先端まで. D2がわからない場合は1st SBから先端までの間を2等分した遠位側
#9:第一対角枝(D1)
#10:第二対角枝(D2)
LCx
#11:LCA入口部から鈍縁枝(OM:obtuse marginal branch)分岐部まで
#12:鈍縁枝(OM:obtuse marginal branch)
#13:鈍縁枝(OM:obtuse marginal branch)分岐部から末梢
#14:#13から分岐する後側壁枝(PL:posterolateral branch)
#15:#13から#14を分岐した後の後下行枝(PD)
<狭窄>
狭窄部位の本来の冠動脈径を類推して, 目測に基づいて表示する.
多方向から造影したもののうち最も狭窄が強く見える角度で, また厳密には拡張末期の静止画像で計測する.
0%, 25%, 50%, 75%, 90%, 99%, 100%に分けられる.
99%で末梢部への造影遅延を伴うもの=99% with delay

【ACC/AHAの形態分類法】

インターベンション治療を前提とした治療戦略, 成功率, 合併症のリスクなどを評価するためにACC/AHAの形態分類法が用いられている.
tapeA→typeCに進むに従い, インターベンションの初期成功率は低下し, 合併症のリスクは増える
①TypeA病変(低リスク)
以下の項目をすべて満たすもの
限局性病変(病変長10mm以下), 同心性病変, 病変への到達が容易, 辺縁がなめらか, 病変部の屈曲が45°以内, 石灰がないorわずか, 完全閉塞でない, 入口部病変でない, 大きな側枝を巻き込んでない, 血栓なし
②TypeB病変(中リスク)
以下の項目を1つ満たすもの→B1 2つ以上満たすもの→B2
円筒状病変(病変長10-20mm), 偏心性の病変, 病変近位部に中等度の屈曲あり, 辺縁が不整, 病変部位の屈曲が中等度(45°~90°), 中等度から高度の石灰化, 3カ月以内の完全閉塞, 入口部病変, 2本のガイドワイヤを要する分岐部病変, ある程度の血栓あり
③TypeC病変(高リスク)
以下のいずれかに該当する
びまん性病変(病変長20mm以上), 病変近位部に高度の屈曲あり, 高度に屈曲した病変(90°以上), 3カ月以上経過した完全閉塞, プロテクト不能な大きな側枝を有している, 脆弱な病変を有する変性した静脈グラフト
ステント治療が標準となり, 急性期の合併症の多くが適切に克服されるようになっており, 現在はSCAI(Society for Cardiovascular Angiography and Intervention)から新たな分類が提唱されている.
①typeⅠ:typeCに該当しない開存病変
②typeⅡ:typeC病変のいずれかの項目(CTOを除く)に該当する開存病変
③typeⅢ:typeC病変に該当しないCTO病変
④typeⅣ:typeC病変のいずれかの項目(CTOを除く)に該当するCTO病変

【TIMI grade】

TIMI:Thrombolysis in myocardial infarction
再灌流療法後の梗塞責任血管の冠血流評価法. 特に心外膜血管を中心とした指標である. TIMI gradeは責任冠動脈における血流遅延の動態から冠動脈血流を推定するものであり, 冠動脈狭窄に対する規定がない.
現在は分岐部病変の側枝などの梗塞血管以外にも適応される.
grade0:造影剤が閉塞部より先に通過しないもの
grade1:造影剤が閉塞部を通過するが, 停滞がみられ, 末梢が完全には造影されない
grade2:造影剤が閉塞部を通過し末梢まで造影される. しかし, 閉塞部末梢への造影剤の流入や流出の速度が非梗塞部位(対側の冠動脈や梗塞責任血管閉塞部の近位部)と比べて遅く, 遅延するもの
grade3:造影剤が閉塞部を通過し, 末梢まで造影される. 閉塞部末梢への造影剤の流入や流出の速度が, 非梗塞部と同等である.
TIMI grade3で再灌流療法の成功とされる.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
nomomedic
2021年に大学を卒業し, 現在は循環器内科医として働いています. 学生時代は循環器が苦手でしたが, 初期研修先の先生にあこがれて循環器内科医になりました. 循環器が苦手な人が少しでも楽しく思えるようなサイトにしたいと思っています.