【冠動脈の解剖】
正常冠動脈には右冠動脈(RCA)と左冠動脈(LCA)がある。
左冠動脈は主幹部(LMT)を経て、左前下行枝(LAD)と左回旋枝(LCx)に分枝する。
LADは前室間溝に沿っており、LCxが左房室間溝、RCAは右房室間溝に沿って走行する。
名前の通り、房室間溝は心房と心室が作り出す溝である。
LCxとRCAはおおよそ同一平面上に存在し、それと直行するようにLADが走行する。
【冠動脈造影(CAG)について】
冠動脈造影(Coronary Angiography:CAG)は、冠動脈の解剖、狭窄部位、狭窄度、病変形態、血流状態を評価する検査である。
CAGの所見を正確に記載するためには、以下の4項目を理解しておくことが重要となる。
- AHA(American Heart Association)冠動脈セグメント分類:病変がどこにあるか
- 冠動脈狭窄度:どの程度狭窄しているか
- ACC/AHA・SCAI病変形態分類:PCIの難易度がどの程度か
- TIMI flow grade:病変より末梢の冠血流がどの程度保たれているか
CAGをする際の見え方
LCA(太文字は省略しないほうがよい)
LAO 45° ➡LAD・LCx中間部・遠位部
LAO 45°CAU 30°➡LMからLAD・LCxの分岐、それぞれの近位部
CAU 30° ➡LCx
RAO 30°CAU 30°➡LM、LCxおよびOMの近位部
RAO 30° ➡LAD、LCxの全体像
RAO 30°CRA 30°➡LAD中間部、中隔枝・対角枝(D)
CRA 30° ➡LAD中間部~遠位部、対角枝(D)
LAO 45°CRA 30° ➡LAD近位部、LADと対角枝(D)の分岐部
RCA
LAO 45°➡RCAの全体像がわかる
CRA 30°➡#3から分枝するところが見えやすい
RAO 30°➡#4AV、#4PDの末梢が見えやすい。LCA側からの側副血行(collateral)もわかる
【AHA冠動脈セグメント分類】
冠動脈の病変部位は、一般的にAHA冠動脈セグメント分類を用いて記載する。
冠動脈造影で得られた画像から、病変の局在を15のsegmentに分割して表現する。
冠動脈の走行や分枝にはバリエーションも多く、RCAが発達していて#15がない場合やLCAが発達していて#3以降が定義できない場合もある。
特に後下行枝(PD:posterior descending artery)がRCAかLCxのどちらから出ているかによって優位性が異なる。
書き方➡#1やseg 1など
RCA
| セグメント | 部位 |
|---|---|
| #1 | 入口部から鋭縁枝(AM:acute marginal)分岐までの間を2等分した近位側。通常は右室枝(RV)があり、それを代用する。 |
| #2 | 入口部からAM分岐までの間を2等分した遠位側。RVからAMまで。 |
| #3 | AMから後下行枝(PD:posterior descending artery)と房室結節枝(AV:AV node artery)の分岐部まで。 |
| #4 | PDとAVの分岐部より末梢。それぞれ#4PD、#4AVと表現する。 |
RCAは右房室間溝を走行し、右室および左室下壁などに血流を供給する。
LMT~LAD
| セグメント | 部位 |
|---|---|
| #5 | LCA入口部からLADとLCxの分岐部まで |
| #6 | LCxが分岐した後から第一中隔枝(1st Major Spetal Branch)分岐部まで |
| #7 | 1st SB分岐部から第二対角枝(D2:Second Diagonal)分岐部まで。D2がわからない場合は1st SBから先端までの間を2等分した近位側 |
| #8 | D2分岐部から先端まで。D2がわからない場合は1st SBから先端までの間を2等分した遠位側 |
| #9 | 第1対角枝(D1) |
| #10 | 第2対角枝(D2) |
LADは前室間溝を走行し、主に左室前壁・心尖部・心室中隔に血流を供給する。
特にLAD近位部の高度狭窄は、広範囲の心筋虚血につながる可能性がある。
LCx
| セグメント | 部位 |
|---|---|
| #11 | LCA入口部から鈍縁枝(OM:obtuse marginal branch)分岐部まで |
| #12 | 鈍縁枝(OM) |
| #13 | OM分岐部から末梢 |
| #14 | #13から分岐する後側壁枝(PL:posterolateral branch) |
| #15 | #13から#14を分岐した後の後下行枝(PD) |
LCxは左房室間溝を走行し、主に左室側壁・後壁に血流を供給する。
(chat GPTで作成)
【冠動脈狭窄度】
CAGでは、正常と考えられる血管径に対して、病変部の血管内腔がどの程度狭くなっているかを評価する。多方向から造影したもののうち最も狭窄が強く見える角度で、また厳密には拡張末期の静止画像で計測する。
狭窄度は一般的に以下のように表記する。
| 狭窄度 | 所見の目安 |
|---|---|
| 0% | 狭窄なし |
| 25% | 軽度狭窄 |
| 50% | 中等度狭窄 |
| 75% | 高度狭窄 |
| 90% | 高度狭窄 |
| 99% | 亜完全閉塞に近い高度狭窄 |
| 100% | 完全閉塞 |
99%で末梢部への造影遅延を伴うもの=99% with delay
【ACC/AHA・SCAI病変形態分類】
ACC/AHA病変形態分類
ACC/AHA病変形態分類は、冠動脈病変の特徴からPCIの手技的難易度を評価するための分類である。
従来、病変はType A・Type B・Type Cに分類され、Type Bは病変形態の特徴数によってB1・B2に細分化される。
type Aからtype Cに進むに従い、インターベンションの初期成功率は低下し、合併症のリスクは増える。
Type A
- 限局性病変(病変長10mm以下)
- 同心性病変
- 病変への到達が容易
- 辺縁がなめらか
- 病変部の屈曲が45°以内
- 石灰がないか、あってもごくわずか
- 完全閉塞でない
- 入口部病変でない
- 大きな側枝を巻き込んでない
- 血栓なし
Type B
以下の項目を1つ満たすもの→B1、2つ以上満たすもの→B2
- 円筒状病変(病変長10-20mm)
- 偏心性の病変
- 病変近位部に中等度の屈曲あり
- 辺縁が不整
- 病変部位の屈曲が中等度(45°~90°)
- 中等度から高度の石灰化
- 3カ月以内の完全閉塞
- 入口部病変
- 2本のガイドワイヤを要する分岐部病変
- ある程度の血栓あり
Type C
- びまん性病変(病変長20mm以上)
- 病変近位部に高度の屈曲あり
- 高度に屈曲した病変(90°以上)
- 3カ月以上経過した完全閉塞
- プロテクト不能な大きな側枝を有している
- 脆弱な病変を有する変性した静脈グラフト
SCAI分類
SCAI(Society for Cardiovascular Anbiography and Intervention)分類は、ACC/AHA病変形態分類を簡略化し、病変の開存・閉塞と複雑性によって分類する方法である。
| SCAI分類 | 病変の特徴 |
|---|---|
| Type I | 非閉塞性病変、ACC/AHA Type Cの特徴なし |
| TypeⅡ | 非閉塞性病変、ACC/AHA Type C(慢性完全閉塞除く)の特徴あり |
| Type III | 閉塞性病変、ACC/AHA Type Cの特徴なし |
| Type IV | 閉塞性病変、ACC/AHA Type C(慢性完全閉塞除く)の特徴あり |
SCAI分類では、特に完全閉塞の有無と複雑病変の特徴を重視している。
ただし、現在の複雑PCIでは、CTOスコアやSYNTAX scoreなど、目的に応じた別の評価方法も使用される。
【TIMI flow grade】
TIMI(Thrombolysis in myocardial infarction)flow gradeは、冠動脈造影における冠動脈の順行性血流を評価する指標である。
責任冠動脈における血流遅延の動態から冠動脈血流を推定するものであり、冠動脈狭窄に対する規定がない。
急性冠症候群(ACS)やPCI前後の冠血流評価で広く使用される。
| TIMI flow | 定義 |
|---|---|
| Grade 0 | 閉塞部より末梢に造影剤が流入しない |
| Grade 1 | 造影剤が閉塞部を通過するが、停滞がみられ、末梢が完全には造影されない |
| Grade 2 | 造影剤が閉塞部を通過し末梢まで造影される。しかし、閉塞部末梢への造影剤の流入や流出の速度が非梗塞部位(対側の冠動脈や梗塞責任血管閉塞部の近位部)と比べて遅く、遅延するもの |
| Grade 3 | 末梢まで正常な速度で造影され、正常な血流が保たれている |
例えば、90%狭窄が存在してもTIMI 3である場合がある。一方、冠動脈が完全閉塞している場合には、閉塞部を越える順行性血流はTIMI 0となる。
また、PCI後にTIMI 3が得られていても、必ずしも心筋組織レベルの灌流が正常とは限らない。
微小循環障害やno-reflow現象が疑われる場合には、冠動脈造影所見だけでなく、心電図変化や心筋灌流の評価も重要となる。
【CAG所見の記載例】
JL4.0(〇) JR 4.0(〇)➡どのguideがかかったかを記載しておくこと
CAG:RCA#2 50%、LAD#6 90%、LCx#11 100%(RCAからcollateral+)
狭窄がない場合はno stenosisやnormal coronaryと記載する。
【参考文献】
- 矢嶋純二(2022)『改訂第2版 これから始める心臓カテーテル検査』株式会社メジカルビュー社








コメントを残す