【サルコイドーシスとは】
サルコイドーシスは、全身のさまざまな臓器に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を形成する原因不明の全身性炎症性疾患です。
病変部にはCD4陽性Tリンパ球やマクロファージなどが集積し、肉芽腫性炎症を引き起こします。
無症状で自然軽快する症例もありますが、心臓・肺・中枢神経などに病変が及ぶと、生命予後に影響する可能性があります。
また、眼・皮膚・神経などの臓器病変では、QOLが著しく低下する場合があります。
主な症状・臓器病変
| 臓器 | 主な症状・所見 |
|---|---|
| 全身 | 発熱、倦怠感、表在リンパ節腫脹、耳下腺腫脹 |
| 眼 | ぶどう膜炎、霧視、飛蚊症 |
| 肺・気道 | 咳嗽、呼吸困難、両側肺門リンパ節腫脹(BHL) |
| 心臓 | 房室ブロック、心室性不整脈、心不全 |
| 皮膚 | 皮膚サルコイド、瘢痕浸潤、結節性紅斑 |
| 神経 | 末梢神経障害、髄膜炎、痙攣、尿崩症 |
| 筋肉 | 筋力低下、ミオパチー |
| 腎臓 | 高Ca血症に伴う尿路結石、腎機能障害 |
特に循環器診療では、原因不明の高度房室ブロック、心室頻拍、左室収縮能低下を認めた場合に、心臓サルコイドーシスを鑑別に挙げることが重要です。
【サルコイドーシスの診断】
サルコイドーシスは指定難病84に該当します。
[組織診断群]
全身のいずれかの臓器で壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が陽性
※既知の原因の肉芽腫および局所サルコイド反応を除外できているもの
[臨床診断群]
類上皮細胞肉芽腫病変は証明されていないが、呼吸器・眼・心臓の3臓器中の2臓器以上において本症を強く示唆する臨床所見を認め、かつ特徴的な検査所見の5項目中2項目以上が陽性のもの
- 両側肺門リンパ節腫脹(BHL)
- 血性ACE活性高値または血性リゾチーム高値
- 可溶性IL-2受容体(sIL-2R)高値
- GaシンチグラフィまたはFDG-PETにおける著明な集積所見
- BAL検査でリンパ球比率上昇、CD4/CD8>3.5
※上記は2015年のサルコイドーシス診断基準に基づく整理です。指定難病の医療費助成に用いる診断基準・重症度分類とは区別して確認してください。
【心臓サルコイドーシスの検査】
① 心電図・ホルター心電図
心臓サルコイドーシスでは、刺激伝導系や心室筋への炎症・線維化によって不整脈が生じます。
代表的な所見は以下です。
- 高度房室ブロック
- 脚ブロック
- 心室期外収縮(PVC)
- 非持続性心室頻拍(NSVT)
- 持続性心室頻拍(VT)
- 異常Q波
特に比較的若年の原因不明の高度房室ブロックでは、心臓サルコイドーシスを疑うことが重要です。
② 心エコー図検査
心臓サルコイドーシスに特徴的な所見として、以下が挙げられます。
| 心エコー所見 | 特徴 |
|---|---|
| 心室中隔基部の菲薄化 | 特徴的な所見の一つ |
| 局所壁運動異常 | 冠動脈支配と一致しないことがある |
| 左室収縮能低下 | びまん性・局所性のいずれもあり得る |
| 心室瘤 | 心室中隔や左室自由壁など |
| 心室壁肥厚 | 炎症活動期に認めることがある |
| 僧帽弁逆流 | 左室リモデリングなどに伴う |
| 心膜液貯留 | 非特異的だが認めることがある |
心室中隔基部の菲薄化は特徴的ですが、認められないからといって心臓サルコイドーシスを否定することはできません。
③ 心臓MRI
心臓MRIは、心筋障害や線維化の評価に有用です。
特に重要なのが**Late Gadolinium Enhancement(LGE:遅延造影)**です。
心臓サルコイドーシスでは、冠動脈支配に一致しない斑状のLGEを認めることが多く、心室中隔基部や左室自由壁などに分布します。典型的には心外膜側〜中層のLGEがみられますが、貫壁性など多様なパターンを示すこともあります。
LGEは心筋障害・線維化を反映しますが、LGE陽性=現在活動性の炎症が存在する、とは限りません。
そのため、炎症活動性の評価にはFDG-PETなどを組み合わせます。
また、LGEは心室性不整脈リスクの評価においても重要です。
④ FDG-PET
FDG-PETは、心筋における活動性炎症の評価に重要な検査です。
サルコイドーシスの炎症病変には活性化マクロファージなどが集積しており、これらの炎症細胞がFDGを取り込むことで病変が描出されます。
FDG-PETで以下のことがわかります。
- 心筋の活動性炎症
- 心臓以外のサルコイドーシス病変
- ステロイド治療後の炎症活動性の変化
ただし、FDG集積はサルコイドーシスに特異的ではなく、他の炎症性疾患でも認められます。
FDG-PETの前処置
正常心筋もFDGを取り込むため、生理的な心筋FDG集積を抑制することが重要です。
主な前処置は以下です。
| 前処置 | 目的 |
|---|---|
| 長時間絶食 | 生理的心筋FDG集積の抑制 |
| 低炭水化物・高脂肪食 | 心筋の脂肪酸利用を促進 |
| 必要に応じたヘパリン投与 | 血中遊離脂肪酸の増加 |
検査前12時間は絶食とします。
また、検査前の食事制限やヘパリン投与は施設ごとのプロトコールに従います。ヘパリンは必須ではなく、出血リスクなどにも注意が必要です。
糖尿病患者では、絶食に伴う低血糖や血糖管理にも注意します。
※高額な治療のため予約キャンセルなどないように注意!!
⑤ Gaシンチグラフィ
Gaシンチグラフィは炎症性病変の検出に用いられます。
ただし、心臓サルコイドーシスにおける活動性炎症の評価では、一般にFDG-PETの方が高い検出感度を示すため、現在はFDG-PETが重要な役割を担っています。
⑥ 心内膜心筋生検
心内膜心筋生検では、非乾酪性類上皮細胞肉芽腫と多核巨細胞などを認めることが特徴です。
ただし、心臓サルコイドーシスの病変は斑状に分布するため、通常の心内膜心筋生検では病変を採取できない場合があります。
組織診断率は報告によって異なりますが、従来の非標的生検では20〜30%程度とされています。
そのため、生検が陰性でも心臓サルコイドーシスは否定できません。
また、心外病変がある場合には、より安全で診断率の高い部位からの生検を検討します。
【心臓サルコイドーシスの診断基準】
JCS 2016年版では、心臓病変を強く示唆する臨床所見として、主徴候5項目と副徴候3項目が定められています。
心臓病変を強く示唆する臨床所見
主徴候5項目中2項目以上が陽性、もしくは主徴候5項目中1項目が陽性で副徴候3項目中2項目以上が陽性の場合である。
主徴候
| 項目 | 所見 |
|---|---|
| a | 高度房室ブロックまたは致死性心室性不整脈 |
| b | 心室中隔基部の菲薄化、心室壁の形態異常(心室瘤、基部以外の菲薄化、心室壁の局所肥厚) |
| c | LVEF<50%または局所壁運動異常 |
| d | GaシンチまたはFDG-PETでの心臓への異常集積 |
| e | 心臓MRIでの心筋LGE |
副徴候
| 項目 | 所見 |
|---|---|
| f | NSVT、PVC、脚ブロック、軸偏位、異常Q波 |
| g | 心筋血流シンチグラフィでの局所欠損 |
| h | 心内膜心筋生検での単核細胞浸潤と中等度以上の心筋間質線維化 |
ただし、これは心臓病変を強く示唆する所見の組み合わせであり、これだけで全例が心臓サルコイドーシスと確定診断されるわけではありません。
組織診断群
心内膜心筋生検や手術検体などで、心筋内に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認める場合です。
臨床診断群
- 心臓以外の臓器で類上皮細胞肉芽腫が陽性であり、かつ心臓病変を強く示唆する臨床所見を満たす場合
- 呼吸器系あるいは眼でサルコイドーシスを強く示唆する臨床所見があり、かつ特徴的な検査所見の5項目中2項目以上が陽性であって、心臓病変を強く示唆する臨床所見を満たす場合
【孤立性心臓サルコイドーシス】
心臓サルコイドーシスでは、心臓以外に明らかなサルコイドーシス病変を認めない症例があります。
これを孤立性心臓サルコイドーシス(isolated cardiac sarcoidosis)と呼びます。
孤立性心臓サルコイドーシスでは、心外病変の組織診断が得られないため、診断が難しくなります。
JCS 2016年版では、孤立性心臓サルコイドーシスに対して独立した診断の手引きが設けられています。
臨床診断には、心臓FDG-PETでの異常集積が必須であり、さらに他の主徴候を組み合わせるなど、通常の心臓病変の診断より厳しい条件が設定されています。
また、巨細胞性心筋炎、心筋炎後心筋症、拡張型心筋症、虚血性心疾患などとの鑑別も重要です。
【心臓サルコイドーシスの治療】
心臓サルコイドーシスの治療は、大きく3つに分けられます。
① 炎症を抑える免疫抑制療法
② 心不全に対する薬物治療
③ 不整脈に対するデバイス治療・カテーテルアブレーション
心臓サルコイドーシスでは、ステロイド治療だけでなく、心不全や致死性不整脈に対する治療も重要です。
今回はステロイド治療についてメインで記載していきます。
① ステロイド治療
炎症活動性を有する心臓サルコイドーシスでは、副腎皮質ステロイドが免疫抑制療法の基本となります。
代表的にはプレドニゾロン(PSL)を使用します。
| 治療段階 | 投与量の一例 |
|---|---|
| 初期治療 | PSL 30 mg/日 |
| 初期投与期間 | 約4週間 |
| 減量 | 2〜4週間ごとに5 mg程度ずつ |
| 維持量 | PSL 5〜10 mg/日 |
特に活動性が高く、急速に心機能が悪化する症例や重篤な不整脈を認める症例では、より高用量のステロイドやステロイドパルス療法が検討される場合があります。
ステロイド導入前に確認すること
ステロイド導入前には、感染症や糖代謝異常、骨粗鬆症などを評価します。
| 検査 | 目的 |
|---|---|
| HBs抗原・HBs抗体・HBc抗体 | HBV再活性化リスク |
| HCV抗体 | HCV感染の確認 |
| 結核スクリーニング | 潜在性結核などの評価 |
| 血糖・HbA1c | 糖尿病・ステロイド高血糖の評価 |
| Cr・eGFR・電解質 | 腎機能・電解質異常 |
| 骨密度測定 | 骨粗鬆症リスク |
| 胸部画像 | 肺病変・感染症の評価 |
HBs抗原陰性でHBc抗体またはHBs抗体陽性の場合にも、既往感染によるHBV再活性化の可能性があるため、必要に応じてHBV DNA測定・モニタリングを検討します。
ステロイド治療と同時に投与する薬剤
ニューモシスチス肺炎(PJP/PCP)予防
第一選択薬はST合剤(バクタⓇ)です。
投与方法➡バクタ配合錠 1T/朝 ※CCr 15-39mL/minでは半量
骨粗鬆症予防
骨密度、既存骨折、年齢、ステロイド投与量などを評価し、必要に応じてビスホスホネート製剤などを使用します。
投与方法➡ビスホスホネート製剤(アレンドロン酸35mg 1日1回起床時 週1回)
【ポイント】
- 導入前にコンサルトしておくこと。
眼科コンサルト→ぶどう膜炎などないか
ステロイド導入→代謝内科コンサルト(基礎疾患にDMあるときは絶対)
【参考文献】
- JCS 2016年版 心臓サルコイドーシスの診療ガイドライン







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