インフルエンザの診断と治療

【インフルエンザについて】

インフルエンザはインフルエンザウイルスによる急性呼吸器感染症であり、一般的に1~4日程度の潜伏期間を経て発症する。

主な症状は以下のとおり。

  • 突然の発熱(38℃以上の高熱が典型的)
  • 悪寒・頭痛・全身倦怠感
  • 筋肉痛・関節痛
  • 咳嗽・咽頭痛・鼻汁
  • 嘔吐・下痢などの消化器症状(特に小児)

鑑別疾患

疾患 鑑別のポイント
COVID-19 症状のみでの鑑別は困難
RSV感染症 高齢者や基礎疾患のある患者で重症化
細菌性肺炎 局所性肺雑音、低酸素血症、画像所見
溶連菌性咽頭炎 咳嗽に乏しい、扁桃白苔、頸部リンパ節腫脹
尿路感染症・腎盂腎炎 尿路症状、CVA叩打痛
敗血症 意識障害、循環不全、臓器障害

インフルエンザ流行期でも、発熱患者をすべてインフルエンザと判断しないことが重要である。

【検査】

基本は鼻咽頭ぬぐい液などを用いた迅速抗原検査を行う。

特に発症直後はウイルス量が少なく、偽陰性となる可能性がある。

発症後12~24時間程度経過してからの検査の方が偽陰性は減らせる。

入院を要するようなインフルエンザ疑いの症例であれば、PCR検査も検討。

【みなし陽性について】

みなし陽性とは、迅速抗原検査が陰性、あるいは検査を実施していなくても、症状・流行状況・接触歴などから臨床的にインフルエンザと診断することです。

1. みなし陽性を考慮する状況

  • 家族や同居者にインフルエンザ陽性者がいる。
  • 学校・保育園・職場などでインフルエンザが流行している。
  • 突然の発熱、悪寒、筋肉痛、咳嗽など典型的な症状を認める。
  • 発症早期で迅速抗原検査が陰性となったが、臨床的な疑いが強い。

 

臨床的にインフルエンザが強く疑われる場合は、検査陽性を確認しなくても抗ウイルス薬を処方できます。特に重症例や重症化リスクの高い患者では、検査結果を待つことで治療開始を遅らせないことが重要です。

状況 救急外来での対応
家族が陽性+典型的な症状 臨床診断による治療を検討
流行期+発症早期の検査陰性 偽陰性を考慮し、必要なら治療
家族が陽性+本人は無症状 発症したとは診断しない
重症・ハイリスク+強い疑い 検査結果を待たずに治療開始
流行なし+非典型的な症状 他疾患の検索や追加検査を優先

【インフルエンザ治療薬】

インフルエンザは自然軽快することも多く、すべての患者に抗ウイルス薬が必須というわけではない。しかし、重症化リスクの高い患者では積極的に治療を検討する。

抗ウイルス薬を積極的に投与する患者

  • 入院を要する患者

  • 肺炎などの合併症を伴う患者

  • 症状が重症または進行性の患者

  • 65歳以上の高齢者

  • 2歳未満の小児

  • 妊婦・産後2週間以内

  • 慢性心疾患、慢性呼吸器疾患、糖尿病、腎疾患などの基礎疾患を有する患者

  • 免疫抑制状態にある患者

上記の患者では、発症48時間を超えていても抗ウイルス薬の投与を検討する。

また、重症例やハイリスク患者では検査結果を待たずに治療を開始してよい。

 

抗インフルエンザ薬の種類と特徴は以下の通り

薬剤名 投与方法 特徴・注意点 薬剤選択のポイント
タミフル(オセルタミビル) 経口・5日間 使用経験が豊富。悪心・嘔吐、腎機能低下時の用量調整に注意 第一選択として使いやすい。 小児・妊婦・高齢者・重症例・入院例
ゾフルーザ(バロキサビル) 経口・単回 1回で治療完結。B型に対する有効性が期待される。小児では低感受性株の出現に注意 軽症外来患者、服薬回数を減らしたい患者。特にB型で選択肢
イナビル(ラニナミビル) 吸入・原則単回 1回の吸入で治療完結。確実な吸入操作が必要。気管支攣縮に注意 内服が苦手で、吸入操作が確実にできる患者
リレンザ(ザナミビル) 吸入・5日間 吸入薬。喘息・COPDでは気管支攣縮に注意 吸入可能な軽症患者。現在は他剤を選ぶことも多い
ラピアクタ(ペラミビル) 点滴静注 経口・吸入が不要。腎機能低下時の用量調整に注意 経口投与困難例、嘔吐が強い患者、入院例での代替薬

※いずれもインフルエンザA型・B型に有効。イナビルには吸入粉末剤と吸入懸濁用製剤があり、用法が異なる。

オセルタミビル タミフルⓇ(75mgカプセル、3%ドライシロップ)

経口薬で重症例にも使用できる。

成人および体重37.5kg以上の小児➡75mg 1日2回 5日間

幼小児➡2mg/kg(ドライシロップで66.7mg/kg)を1日2回 5日間

新生児・乳児➡3mg/kg(ドライシロップで100mg/kg)を1日2回 5日間

パロキサビル ゾフルーザⓇ(10mg、20mg、2%顆粒)

1回内服で終了できる経口薬

成人および12歳以上➡40mgまたは顆粒4包(体重80kg以上なら倍量)

12歳未満➡体重40kg以上なら40mgまたは顆粒4包(体重20-40kgなら半量、10-20kgなら
10mg)

ラニナミビル イナビルⓇ(20mg吸入粉末剤、160mg吸入混濁用)

吸入薬で吸入操作が必要!

成人および10歳以上の小児➡単回投与の場合は2容器、2日間投与の場合は1回1容器
10歳未満➡1容器

吸入混濁用の場合は160mgっを生理食塩水2mlで懸濁し、ネブライザーを用いて単回吸入

ザナミビル リレンザⓇ

吸入薬であるが、気管支攣縮のリスクがあり、気管支喘息患者やCOPD患者では注意。

成人、小児でも変わらず使用できる。

1回10mg(5mgブリスターを2ブリスター)を1日2回、5日間吸入

ペラミビル ラピアクタⓇ(300mgバッグ)

成人➡300mgを15分以上かけて点滴静注(重症例では600mgを15分以上かけて点滴、症状に合わせて連日反復投与)

小児➡10mg/kgを15分以上かけて点滴静注、症状に応じて連日反復投与(上限は1回600mgまで)

【ポイント】

救急外来で覚えておきたいポイントは以下の通り

  • 迷ったらタミフル:特に妊婦、低年齢児、重症例、入院例で選択しやすい。

  • 単回内服ならゾフルーザ:ただし低年齢児や免疫抑制患者、重症例では慎重に判断する。

  • 内服困難ならラピアクタ:経口・経腸投与ができない場合の選択肢。

  • 喘息・COPDでは吸入薬を避ける:リレンザ・イナビルによる気管支攣縮に注意する。

【参考文献】

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nomomedic
循環器内科医 / 不整脈専門。 カテーテルアブレーションやCIED診療を中心に循環器診療に携わっています。 研修医・医学生・若手の先生が少しでも循環器のことに興味を持ってもらえたら幸いです。