ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)

概要

ARB(Angiotensin II Receptor Blocker)は、アンジオテンシンIIのAT1受容体への結合を阻害する薬剤です。

高血圧診療では非常によく使用される降圧薬で、単に血圧を下げるだけでなく、心臓や腎臓に対するレニン・アンジオテンシン系(RAS)の作用を抑えることが大きな特徴です。

ARBはどこに作用する?

レニン・アンジオテンシン系は、

レニン
↓
アンジオテンシノーゲン
↓
アンジオテンシンI
↓ ACE
アンジオテンシンII
↓
AT1受容体

という流れで作用します。

アンジオテンシンIIがAT1受容体を刺激すると、

  • 血管収縮
  • アルドステロン分泌
  • Na・水分貯留
  • 交感神経活性化
  • 心筋肥大・線維化
  • 血管リモデリング

などが起こります。

ARBはAT1受容体を直接ブロックすることでこれらの作用を抑え、血圧を低下させます。

 

種類

日本では多くのARBが使用できます。

一般名 主な商品名 高血圧での通常量 最大量
ロサルタン ニューロタン® 25〜50 mg/日 100 mg/日
カンデサルタン ブロプレス® 4〜8 mg/日 12 mg/日
バルサルタン ディオバン® 40〜80 mg/日 160 mg/日
テルミサルタン ミカルディス® 40 mg/日 80 mg/日
オルメサルタン オルメテック® 10〜20 mg/日 40 mg/日
イルベサルタン アバプロ® / イルベタン® 50〜100 mg/日 200 mg/日
アジルサルタン アジルバ® 20 mg/日 40 mg/日

いずれも基本的には1日1回投与です。

ARBは同じ作用機序を持っていますが、降圧力、半減期、承認されている適応などが異なるため、すべて同じ薬として扱うわけではありません。

カンデサルタン ブロプレスⓇ

循環器領域で特に重要なARBです。

高血圧だけでなく、日本では慢性心不全に対する適応を持つことが大きな特徴です。

用量

腎血管性高血圧症→1回2mg 1日1回から開始し、8mgまで増量可。

慢性心不全→1回4mgから開始し、8mgまで増量可。

バルサルタン ディオバンⓇ

現在ではARNIであるサクビトリル/バルサルタンの構成成分としても重要です。

降圧作用はそこまで強くない印象。

用量

高血圧症→1回40~80mg 1日1回、160mgまで増量可。

アジルサルタン アジルバⓇ

ARBの中では一番降圧作用が強い印象。

用量

高血圧症→1回20mg 1日1回で開始し、40mgまで増量可。

オルメサルタン オルメテックⓇ

比較的、降圧作用が強い印象。

用量

高血圧症→1回10~20mg 1日1回で開始し、40mgまで増量可。

副作用・注意点

ARBを開始・増量するときに特に確認したいのが、

血圧・腎機能・K値

です。

高カリウム血症

アルドステロン作用が抑制されるため、K値が上昇することがあります。

特にCKD、MRA併用、K保持性利尿薬、K製剤、高齢者などでは注意が必要です。

腎機能悪化

ARBは輸出細動脈を拡張させるため、開始後にCrが上昇することがあります。

特に脱水、腎動脈狭窄、NSAIDs併用、利尿薬による過度の体液減少などがある場合には注意。

そのためARB開始後・増量後には、必要に応じてCr/eGFRとKを再評価します。

低血圧

高齢者、脱水、利尿薬使用中、心不全などでは過度な血圧低下に注意します。

妊娠中は使用しない

ARBは妊婦または妊娠している可能性のある女性には禁忌です。

胎児の腎機能障害、羊水過少など重大な影響を生じる可能性があります。

妊娠可能年齢の患者に処方する場合には、この点を必ず意識する必要があります。

周術期はどうする?

ARB投与中の患者では、麻酔や手術時にRAS抑制によって高度な低血圧を起こす可能性があります。

多くのARBの添付文書には「手術前24時間は投与しないことが望ましい」と記載されています。

ただし実際の周術期管理では、手術内容、心不全の有無、血圧などによって判断が異なるため、一律ではなく患者ごとに考える必要があります。

換算表

エンレストⓇ
100mg
200mg
400mg
カンデサルタン(ブロプレス)
8mg
16mg
32mg
オルメサルタン(オルメテック)
20mg
40mg
80mg
ロサルタン(ニューロタン)
50mg
100mg
バルサルタン(ディオバン)
80mg
160mg
320mg
テルミサルタン(ミカルディス)
40mg
80mg
イルベサルタン(イルベタン)
150mg
300mg

まとめ

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nomomedic
循環器内科医 / 不整脈専門。 カテーテルアブレーションやCIED診療を中心に循環器診療に携わっています。 研修医・医学生・若手の先生が少しでも循環器のことに興味を持ってもらえたら幸いです。