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【消化性潰瘍治療薬】酸分泌抑制薬

概要

治療の中心として使用されている薬剤は, 攻撃因子である酸分泌抑制作用をもつK+競合型胃酸分泌抑制薬(P-CAB), プロトンポンプ阻害薬(PPI), ヒスタミン受容体拮抗薬(H2RA)である.
P-CAB, PPI, H2RAの順に胃酸分泌抑制力が強い.
P-CAB, H2RAは胃酸分泌抑制の立ち上がりが速い.
GERDに対しては重症であればP-CABが1st, 軽症であればPPIと有意差なし.

K+競合型胃酸分泌抑制薬(P-CAB)

K+と競合してプロトンポンプを阻害する. 従来のPPIと異なり酸による活性化を必要としないため, 全ての壁細胞のプロトンポンプを同時に阻害する→内服後4時間という速さで胃内pHをpH7以上にコントロールすることができる.
併用禁忌:アタザナビル硫酸塩, リルピビリン塩酸塩→胃酸分泌が強力に抑制されることにより吸収が低下する.
併用注意:クラリスロマイシン→CYP3A4で代謝されるため, 濃度が上昇する恐れがある.
     イトラコナゾール, ゲフェチニブ→胃酸分泌が強力に抑制されることにより吸収が低下する.
     ジゴキシン, メチルジゴキシン→同じ機序で血中濃度が上昇するおそれがある.

種類

■ボノプラザン タケキャブⓇ
適応:①胃潰瘍・十二指腸潰瘍
   ②逆流性食道炎(GERD)
   ③低用量アスピリン, NSAIDs投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制
処方:タケキャブⓇ 1回20mg 1日1回. 胃潰瘍は8週間まで, 十二指腸潰瘍は6週間まで
   ②タケキャブⓇ 1回20mg 1日1回. 通常は4週間まで, 効果不十分な場合は8週間まで. 維持療法は1回10mg
   ③タケキャブⓇ 1回10mg 1日1回

プロトンポンプ阻害薬(PPI)

上部小腸から吸収されて血中から胃壁細胞に移行し, 分泌細管の高濃度のH+と接することで活性化されプロトンポンプと非可逆的に結合し胃酸分泌を強力に抑制する. 反復投与で耐性は生じないが, 最大の酸分泌抑制効果発現までに数日を要する.
近年, 腎機能障害の増加・肺炎の増加・大腿骨頸部骨折の増加が注目されている.
併用禁忌:アタザナビル硫酸塩, リルピビリン塩酸塩→胃酸分泌が強力に抑制されることにより吸収が低下する.
併用注意:イトラコナゾール, ゲフェチニブ→胃酸分泌が強力に抑制されることにより吸収が低下する.
     ジゴキシン, メチルジゴキシン→同じ機序で血中濃度が上昇するおそれがある.

種類

〇■オメプラゾール オメプラゾン/オメプラールⓇ
全世界で最も使われたPPI. 効果に個人差がある.
適応:①胃潰瘍, 十二指腸潰瘍, Zollinger-Ellison症候群
   ②GERD
   ③非びらん性胃食道逆流症
用量:オメプラールⓇ 1回20mg 1日1回. 胃潰瘍は8週間まで, 十二指腸潰瘍は6週間まで.
   ②オメプラールⓇ 1回20mg 1日1回, 通常は8週間まで. 維持療法は1回10~20mg
   ③オメプラールⓇ 1回10mg 1日1回, 通常は4週間まで
注射:オメプラールⓇ 1回20mgを5%ブドウ糖20mLに溶かして, 緩徐に静注. 1日2回
■エソメプラゾール ネキシウムⓇ
CYP2C19が関与する薬剤との相互作用がオメプラゾールと比べて少ない.
適応:①胃潰瘍, 十二指腸潰瘍, Zollinger-Ellison症候群
   ②GERD
   ③非びらん性胃食道逆流症
   ④NSAIDs, 低用量アスピリン投与時の胃潰瘍・十二指腸の再発抑制
用量:ネキシウムⓇ 1回20mg 1日1回. 胃潰瘍は8週間まで, 十二指腸潰瘍は6週間まで.
   ②ネキシウムⓇ 1回20mg 1日1回, 通常は8週間まで. 維持療法は1回10~20mg
   ③ネキシウムⓇ 1回10mg 1日1回, 通常は4週間まで
   ④ネキシウムⓇ 1回20mg 1日1回
■ランソプラゾール タケプロンⓇ
水に浮遊させた後に経鼻チューブや胃瘻チューブで投与することが可能.
適応:①胃潰瘍, 十二指腸潰瘍, Zollinger-Ellison症候群
   ②GERD
   ③非びらん性胃食道逆流症
   ④NSAIDs, 低用量アスピリン投与時の胃潰瘍・十二指腸の再発抑制
用量:タケプロンⓇ 1回30mg 1日1回. 胃潰瘍は8週間まで, 十二指腸潰瘍は6週間まで.
   ②タケプロンⓇ 1回30mg 1日1回, 通常は8週間まで. 維持療法は1回15~30mg
   ③タケプロンⓇ 1回15mg 1日1回, 通常は4週間まで
   ④ネキシウムⓇ 1回15mg 1日1回

ヒスタミン受容体拮抗薬(H2RA)

ヒスタミン受容体を特異的に競合阻害して主に夜間の胃酸分泌を抑制する.
PPIと比較してTmaxが短く、内服後早期から強い酸分泌抑制効果を得られる.
しかし、1週間程度の反復投与によって耐性を生じる.

種類

〇■ファモチジン ガスターⓇ
胃粘膜血流の増加による粘膜防御因子増強作用をあわせ持つ.
適応:①胃潰瘍, 十二指腸潰瘍, Zollinger-Ellison症候群, 上部消化管出血, GERD
   ②急性胃炎・慢性胃炎の胃粘膜病変(びらん, 出血, 発赤, 浮腫)の改善
用量:ガスターⓇ 1回20mg 1日2回
   ②ガスターⓇ 1回10mg 1日2回
注射:ガスターⓇ 1回20mgを5%ブドウ糖20mLに溶かして, 緩徐に静注. 1日2回. (20mgを筋注でもOK)

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