BNP・NT-proBNPの違いと基準値|カットオフ値・測定タイミング・注意点

【概要】

BNP(B-type natriuretic peptide:B型ナトリウム利尿ペプチド)は、主に心室の心筋細胞から分泌されるホルモンである。

心室壁の伸展や圧・容量負荷に応じて分泌が亢進し、利尿・ナトリウム排泄促進作用、血管拡張作用、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の抑制作用などを示す。

BNPは心室で前駆体preproBNPとして合成され、さらにやや低分子のproBNPとなり、N末端側2/3部分(NT-ProBNP)が除去されたものがBNPとして活性を示す。

  • BNP(32アミノ酸):生理活性を有するホルモン
  • NT-proBNP(76アミノ酸):生理活性を持たないN末端側の断片
項目 BNP NT-proBNP
生理活性 あり なし
主な役割 利尿・血管拡張など 心筋負荷を反映するバイオマーカー
半減期(目安) 約20分 約60~120分
腎機能低下の影響 受ける より強く受ける

【心不全診断のカットオフ値】

日本心不全学会の2023年改訂ステートメントでは、BNP・NT-proBNPの値に応じて、心不全の可能性や追加検査の必要性を評価する。

BNP(pg/mL) NT-proBNP(pg/mL) 臨床的解釈
≤18.4 ≤55 心不全の可能性は極めて低い
18.4超~35未満 55超~125未満 心不全の可能性は低い
35以上~100未満 125以上~300未満 前心不全または心不全の可能性がある
100以上~200未満 300以上~900未満 心不全の可能性が高い
≥200 ≥900 高リスク心不全の可能性が高い

前心不全:心臓機能障害があるが、心不全症状・徴候がない

特に重要なカットオフ値は以下の2つである。

① BNP ≥35 pg/mL、NT-proBNP ≥125 pg/mL

前心不全または心不全の可能性を考慮し、心電図、胸部X線、心エコー図などによる評価を検討する。

② BNP ≥100 pg/mL、NT-proBNP ≥300 pg/mL

心不全の可能性が高く、早期の心機能評価や原因検索が必要となる。

ただし、これらの数値だけで心不全を確定診断することはできない。

急性心不全を疑う場合

救急外来などで急性心不全を疑う場合は、以下の値が除外診断の目安となる。

  • BNP <100 pg/mL
  • NT-proBNP <300 pg/mL

これらを下回る場合、急性心不全の可能性は低くなる。

一方、カットオフ値を超えた場合も、それだけで急性心不全と確定するわけではない。症状、身体所見、胸部画像、心エコー図などと併せて判断する。

【BNP・NT-proBNPに影響する因子】

BNP・NT-proBNPは心不全の重症度だけで決まるわけではない。

特に、腎機能、年齢、心房細動、肥満などの影響を考慮する必要がある。

因子 BNP・NT-proBNPへの影響
腎機能低下 上昇(特にNT-proBNP)
高齢 上昇
心房細動(AF) 上昇
肺高血圧症・右心負荷 上昇
急性冠症候群・心筋虚血 上昇することがある
弁膜症・心筋症 上昇することがある
肥満 低下

① 腎機能低下

BNPとNT-proBNPはいずれも腎機能低下によって上昇するが、特にNT-proBNPは腎排泄への依存度が高い。

そのため、慢性腎臓病(CKD)患者では、NT-proBNP高値が必ずしも心不全増悪を意味しない。

② 心房細動(AF)

AF患者では、心房への負荷や心拍数の増加などにより、BNP・NT-proBNPが上昇しやすい。

洞調律患者と同じ数値でも、心不全の可能性や重症度の解釈が異なる場合がある。

③ 肥満

肥満患者ではBNP・NT-proBNPが低値となる傾向がある。

特にHFpEFでは、心不全が存在してもBNP・NT-proBNPが比較的低値にとどまることがあり、正常値のみで心不全を否定しないことが重要である。

【測定するタイミング】

① 心不全を疑う症状・身体所見がある場合

労作時呼吸困難、起坐呼吸、下腿浮腫、体重増加などを認め、心不全が疑われる場合に測定する。

BNP・NT-proBNPは心不全の除外診断に特に有用であり、心エコー図などの追加検査の必要性を判断する参考となる。

② 心不全増悪時・治療介入後

心不全増悪時の評価や、利尿薬・心不全治療薬の導入後における治療反応の確認に使用する。

ただし、BNP・NT-proBNPの変化だけで治療方針を決定せず、体重、尿量、血圧、腎機能、うっ血所見などと併せて評価する。

③ 慢性心不全の定期フォロー

慢性心不全患者では、経時的なBNP・NT-proBNPの変化が病状悪化や予後の評価に役立つ。

測定間隔は心不全の重症度、病状の安定性、治療変更の有無などに応じて決定する。

また、心不全の危険因子を有する患者や器質的心疾患のある患者でも、臨床的に必要な場合には測定を検討する。

※心不全Stage Aでも年1回は測定

【注意点】

ARNI使用時

ARNIは、サクビトリルによってネプリライシンを阻害する。

ネプリライシンはBNPの分解に関与しているため、ARNI導入後にはBNPが上昇する場合がある。

一方、NT-proBNPはネプリライシンによる直接的な分解の対象ではないため、ARNI使用中の心不全評価ではNT-proBNPが用いられることが多い。

ARNI導入後にBNPが上昇しても、それだけで心不全増悪とは判断しない。

ただし、BNPも全く評価できなくなるわけではなく、導入前後の変化や臨床経過を踏まえた解釈が必要である。

診療報酬

BNP・NT-proBNPの測定では、医学的な必要性に加えて、診療報酬上の算定要件を確認する必要がある。

  • BNPとNT-proBNPの同時測定・算定には制限がある。
  • 診療録には、心不全の診断・評価目的や測定の必要性を適切に記載する。

※算定要件は改定される可能性があるため、最新の診療報酬点数表・通知を確認する。

現時点でのイメージ➡月1回ならOK、同時測定は✕、疑い病名は✕

【まとめ】

(chat GPTで作成)

【参考文献】

  • JCS/JHFS 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン
  • 日本心不全学会.血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版
  • Eur Heart J. 2021; 42: 3599-3726.

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循環器内科医 / 不整脈専門。 カテーテルアブレーションやCIED診療を中心に循環器診療に携わっています。 研修医・医学生・若手の先生が少しでも循環器のことに興味を持ってもらえたら幸いです。