【CIED】リードレスペースメーカについて

【概要】

リードレスペースメーカ(LP)は経カテーテル的にデバイスを右室中隔に留置可能であり, リード・皮下ポケットが必要ないデバイスである.
リードレスペースメーカではペースメーカ合併症の多くを占める皮下ポケットやリード関連の合併症が回避されるため, 合併症の頻度が3割減少したという報告もある.

☆経静脈リードペースメーカ(TV)との比較

TV
LP
穿刺部
鎖骨下静脈
大腿静脈
ポケット
あり
なし
入院期間
1週間前後(ポケットの経過観察期間)
4日前後
電池寿命
約10年(※本体のメーカー・設定・作動で変動する)
交換・追加
ジェネレータのみ交換(何度も可能)
追加で植え込み(計3個まで)
主な合併症
ポケットの感染および血腫、気胸、
リード穿孔、脱落(dislodgement),
慢性期のリード損耗による新規リード追加
リードによる三尖弁逆流(TR), 静脈閉塞
穿刺部血腫、心膜液貯留、
本体の脱落
上記のように, LPでは皮下ポケットが必要なく, 感染リスクが極めて少ないこと, リードトラブルがないことがメリットである.
ただし, AV同期に関してはTVの方が勝っており, 刺激伝導系ペーシングができないことも欠点である.

 

【適応】

※2024年時点ではVVIもしくはVDDR(AVEIR VR, Micra AV2)しかできなかった.

→同期性が得られないことから, 徐脈性心房細動や高齢者に対して使用されることが多かった.

  • 若年患者では経静脈リードペースメーカ植え込み後に感染リスクへの曝露が長期化すること, 高い活動性によりリード損傷のリスクを増大させるという懸念があることから, リードペースメーカの有用性に注目が集まっている.
  • VDDペースメーカではトラッキング可能な上限心房レートが115/min程度のため, 運動時に房室同期がなくなることが現行システムの限界である.
  • 2024年9月にAVEIR ARが追加で薬事承認を得たことにより, AAI/DDD作動できるようになった.

【TVとの使い分け】

適応の判断で大事なのは以下の点.
①静脈アクセスおよび感染リスク
②高い房室同期の必要性
③今後, CRTになる可能性の高さ

【今後のさらなる展望】

上記のようにLPM+S-ICDによるATP治療, LPによるCRT, LPによるCSPが出てくる可能性がある.

【参考文献】

●JCS フォーカスアップデート不整脈治療(2024)
●N Engl J Med. 2024; 390: 442-454.
●J Am Coll Cardiol. 2024; 84: 2131-2147.

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nomomedic
2021年に大学を卒業し, 現在は循環器内科医として働いています. 学生時代は循環器が苦手でしたが, 初期研修先の先生にあこがれて循環器内科医になりました. 循環器が苦手な人が少しでも楽しく思えるようなサイトにしたいと思っています.