β遮断薬

【概要】

β遮断薬は交感神経系のβアドレナリン受容体を遮断する薬剤である。

心臓には主にβ1受容体が存在し, カテコラミンによりβ1受容体を刺激すると、

β1受容体 → Gs蛋白 → adenylate cyclase → cAMP増加 → PKA活性化 → Ca²⁺流入増加

という経路を介して、心拍数や心収縮力が増加します。

β遮断薬はこの経路を抑制することで、

  • 心拍数低下
  • 心収縮力低下
  • 房室結節伝導抑制
  • 心筋酸素消費量の低下
  • レニン分泌抑制
  • 過剰な交感神経活性の抑制

などの作用を示す。

抗不整脈薬ではVaughan Williams分類でⅡ群にあたる。

→洞結節や房室結節においてCa流入の促進やペースメーカー電流の増加(HR↑)を抑制することで、房室結節や洞結節における再分極の遅延、不応期の延長につながる。

β1受容体とβ2受容体の違い

β受容体にはいくつかのサブタイプがありますが、循環器診療ではβ1とβ2が重要です。

受容体 主な分布 刺激による主な作用
β1 心臓、腎臓 心拍数↑、収縮力↑、房室伝導↑、レニン分泌↑
β2 気管支、血管平滑筋など 気管支拡張、血管拡張など

したがって、β1を選択的に遮断できれば、心拍数を低下させながらβ2遮断による気管支収縮などを比較的回避しやすくなります。

この**「β1選択性」**がβ遮断薬を使い分けるうえで重要なポイントになります。

種類別での使い方

今回はよく使用するビソプロロール・カルベジロール・ランジオロールに絞って説明します。

ざっくり整理すると以下の通りになります。

ビソプロロール カルベジロール ランジオロール
β1選択性 高い 低い(β1/β2遮断) 非常に高い
α1遮断
投与 経口・貼付剤 経口 静注
作用時間 長い 長い 非常に短い(半減期4分)
主な場面 慢性期 慢性期 急性期
HFrEF 慢性治療目的ではない
AF rate control ◎(急性期)
血圧低下 比較的少ない 起こりやすい 調節しやすい

ビソプロロール メインテート/ビソノテープⓇ

β1選択性が高く遮断作用が強く、頻脈性心房細動に対するHRコントロールの1st choice。

ビソノテープは経口摂取困難の症例に用いることができ、気管支喘息でも比較的安全に使用することができる。

ビソプロロールを使いたいとき➡心拍数をしっかり下げたいとき

用量

頻脈性心房細動→メインテートⓇ 1回2.5mg 1日1回 効果不十分の場合は5mgまで増量可

        ビソノテープⓇ 1回4mg 1日1回 効果不十分の場合は8mgまで増量可

慢性心不全→メインテートⓇ 1回0.625mg 1日1回 忍容性をみながら増量し, 最大5mg

高血圧症→メインテートⓇ 1回5mg 1日1回

     ビソノテープⓇ 1回8mg 1日1回 適宜減量可能

HFrEFの際の増量の仕方としては0.625mgを2週間以上続けたのちに1.25mgに増量。その後、4週間以上の間隔で段階的に増量していく。

カルベジロール アーチストⓇ

β1受容体+β2受容体を遮断する非選択的β遮断作用に加えて、α1受容体遮断作用(末梢血管拡張)も持っている。

β2受容体を遮断し気管支を収縮させるため、気管支喘息には使わない方が良い。

カルベジロールを使いたいとき➡HFrEFで血圧に余裕があるとき

用量

高血圧症→アーチストⓇ 1回10-20mg 1日1回

狭心症→アーチストⓇ 1回20mg 1日1回

慢性心不全→アーチストⓇ 1回1.25mg 1日2回 忍容性をみながら増量し, 最大20mg

頻脈性心房細動→アーチストⓇ 1回5mg 1日1回 最大20mg

HFrEFの際は2.5mgで開始し、1週間以上の間隔で段階的に増量していく。

ランジオロール オノアクトⓇ

高β1選択性・超短時間作用型の静注薬。急性期、特に心機能低下を伴う頻脈性不整脈で使いやすい。

頻脈によって心不全が悪化している一方、LVEFが低下しているため、陰性変力作用のある薬剤を大胆に投与するのは怖いというときに、少量から開始して調整することができる。

ランジオロールを使いたいとき➡急性期の頻脈性AFでレートコントロールしたいとき

用量

適応 開始 維持・調節 最大
手術時のAF/AFL/洞性頻脈 125 μg/kg/min × 1分 40 μg/kg/min、その後 10–40 μg/kg/minで調節 40 μg/kg/min
術後のAF/AFL/洞性頻脈 60 μg/kg/min × 1分 → 20 μg/kg/min 不十分なら125 μg/kg/min ×1分 → 40 μg/kg/min。以後 10–40 μg/kg/min 40 μg/kg/min
心機能低下例のAF/AFL 1 μg/kg/min 1–10 μg/kg/minで調節 10 μg/kg/min
難治性VF・血行動態不安定VT 1 μg/kg/min 通常 1–10 μg/kg/min 再発時は40 μg/kg/minまで
敗血症に伴うAF/AFL/洞性頻脈 1 μg/kg/min HR・BPを見ながら調節 20 μg/kg/min

※1μg/kg/min=1γ

よく使う製材の溶かし方:バイアル150mg+生食50mL=150mg/50mL(濃度:3000μg/mL)

特に循環器内科でよく使う低心機能+AF/AFLでは非常にシンプルで、

1 μg/kg/minから開始 → HR・BPを見ながら1–10 μg/kg/minで調節

と覚えておけばよい。

換算表

β遮断薬の強度の目安 ビソプロロール内服 ビソノテープ カルベジロール
少量 1.25 mg/日 2 mg/日 5 mg/日
中等量 2.5 mg/日 4 mg/日 10 mg/日
最大用量相当 5 mg/日 8 mg/日 20 mg/日

まとめ

(画像はchat GPTで作成)

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nomomedic
循環器内科医 / 不整脈専門。 カテーテルアブレーションやCIED診療を中心に循環器診療に携わっています。 研修医・医学生・若手の先生が少しでも循環器のことに興味を持ってもらえたら幸いです。