【概要】
βラクタム系抗菌薬→ペニシリン系, セフェム系, カルバペネム系
※βラクタム系抗菌薬以外はβラクタム系と関連付けて覚える.
細菌は覚えるのが大変なのでグラム陽性球菌(GPC), グラム陰性桿菌(GNR), 嫌気性菌にわけて覚える.
GPC→ブドウ球菌, 連鎖球菌
GNR→腸内細菌目(大腸菌, クレブシエラ), 非発酵菌(緑膿菌)
嫌気性菌→横隔膜より上(口腔内常在菌), 横隔膜より下(腸管内の細菌, バクテロイデス・フラジリス)
<各細菌について>
ブドウ球菌→皮膚にいる
連鎖球菌→広い意味では肺炎球菌も. 皮膚や咽頭にいる.
腸内細菌目→腸管内にいる
非発酵菌→水回りやデバイスにいる. 酸素があるほうが生きやすい
プロテウス→GNRの1つ. ウレアーゼを産生し, 尿中NH3を産生しpH↑し尿路結石ができてしまうため, 尿路感染症の原因となる.
<耐性について>
・抗菌薬を分解・変形(βラクタマーゼ)
・抗菌薬作用部位の変形
・抗菌薬を菌体に入れない
・抗菌薬を菌体内から汲み出す
【ペニシリン系】
☆ペニシリンG
元々は黄色ブドウ球菌に対する薬剤だったが, 現在はほとんど耐性化されている.
スペクトラム→連鎖球菌〇, 肺炎球菌〇, 腸球菌〇, リステリア〇, 横隔膜から上
ブドウ球菌✕, 大腸菌✕, 横隔膜から下✕
対象→肺炎球菌性肺炎, 連鎖球菌による皮膚軟部組織感染症・IE, 梅毒
☆アンピシリン(ABPC) ■アモキシシリン
ペニシリンGとスペクトラムはほとんど一致しているが, 大腸菌に少しだけ対応できるようになる.
☆アンピシリン・スルバクタム(ABPC/SBT) ■アモキシシリン・クラブラン酸
スペクトラム→連鎖球菌〇, 肺炎球菌〇, 腸球菌〇, リステリア〇, 横隔膜から上
ブドウ球菌〇, 大腸菌△, 横隔膜から下〇
※大腸菌の感受性は50%程度と低い.
☆ピペラシリン・タゾバクタム(PIPC/TAZ)
嫌気性菌のカバーに優れている.
スペクトラム→連鎖球菌〇, 肺炎球菌〇, 腸球菌〇, リステリア〇, 横隔膜から上
ブドウ球菌〇, 大腸菌〇, 緑膿菌〇, 横隔膜から下〇
【セフェム系】
☆セファゾリン(第一世代) ■セファレキシン
皮膚軟部組織感染症や周術期抗菌薬として使用される.
スペクトラム→S&S(皮膚常在菌)±PEK(腸内細菌目→尿路感染症)
ブドウ球菌(Staphylococcus spp)〇, 連鎖球菌(Streptococcus spp)〇,
プロテウス(Proteus mirabilis)〇, 大腸菌(Escherichia coli)〇, クレブシエラ(Klebsiella pneumoniae)〇
※PEKに関しては地域の感受性によって変わる.
☆セフトリアキソン(第三世代)
救急外来で問題になる感染症に対して使用できる.
スペクトラム→S&S+HMPEK(HM→上下気道感染症)
ブドウ球菌(Staphylococcus spp)〇, 連鎖球菌(Streptococcus spp)〇,
インフルエンザ桿菌(Haemophilus influenzae)〇, モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarralis)〇
プロテウス(Proteus mirabilis)〇, 大腸菌(Escherichia coli)〇, クレブシエラ(Klebsiella pneumoniae)〇
☆セフェピム(第4世代)
院内感染症に対して効く.
スペクトラム→S&S+HMPEK+SPACE
セラチア(Serratia marcescens)〇, 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)〇, アシネトバクター(Acinetobactor baumannii)〇, シトロバクター(Citrobacter spp)〇, エンテロバクター(Enterobacter spp)〇
☆セフメタゾール(セファマイシン系)
スペクトラム→S&S+PEK(基本的には第2世代と同じ)
嫌気性菌(〇), ESBL産生菌(〇)
【カルバペネム系】
イミペネム→GPC寄り メロペネム・ドリぺネム→GNR寄り
スペクトラム→PIPC/TAZとほぼ同じ
連鎖球菌〇, 肺炎球菌〇, 腸球菌〇, リステリア〇, 横隔膜から上
ブドウ球菌〇, 大腸菌(ESBL産生菌も)〇, 緑膿菌〇, 横隔膜から下〇
※腸球菌感染症は苦手
【ST合剤】
セフトリアキソンのスペクトラムをカバーできる経口抗菌薬である.
ただし, 副作用が出てきやすい.
スペクトラム→ブドウ球菌(Staphylococcus spp)〇, 連鎖球菌(Streptococcus spp)△,
インフルエンザ桿菌(Haemophilus influenzae)〇, モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarralis)〇
プロテウス(Proteus mirabilis)〇, 大腸菌(Escherichia coli)〇, クレブシエラ(Klebsiella pneumoniae)〇
【ニューキノロン系】
☆レボフロキサシン
セフェピムのスペクトラムをカバーできる経口抗菌薬である.
大腸菌の50%程度しか効かない.
薬物相互作用がある. (ワーファリン, 酸化Mg)
副作用→QT延長, 結合組織障害
結核菌に中途半端に効いてしまう.
スペクトラム→ブドウ球菌(Staphylococcus spp)〇, 連鎖球菌(Streptococcus spp)△,
インフルエンザ桿菌(Haemophilus influenzae)〇, モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarralis)〇
プロテウス(Proteus mirabilis)〇, 大腸菌(Escherichia coli)△, クレブシエラ(Klebsiella pneumoniae)〇
セラチア(Serratia marcescens)〇, 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)〇, アシネトバクター(Acinetobactor baumannii)△, シトロバクター(Citrobacter spp)〇, エンテロバクター(Enterobacter spp)〇
GPC
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GNR
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嫌気性菌
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捕捉
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シプロフロキサシン
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✕
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◎
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✕
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生体利用率70%
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レボフロキサシン
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◎
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◎
|
✕
|
|
モキシフロキサシン
|
◎
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〇
|
◎
|
緑膿菌に活性なし. 尿路感染症には使えない
|
※モキシフロキサシンは肝代謝→尿路感染症に使えない
【嫌気性菌カバーができる抗菌薬】
→TAZ/PIPCを経口抗菌薬で代用するためには嫌気性菌カバーが必要.
☆メトロニダゾール
ほぼ完璧に嫌気性菌をカバーできる.
CD腸炎の治療薬である.
☆クリンダマイシン
ほどほどに嫌気性菌をカバーできる.
CD腸炎のリスクになる→CDを選択的に生存させてしまう
【ポイント】
・腸球菌, リステリアはセフェム系が効かない!
・インフルエンザ桿菌の3つのタイプ
レベル1→BLNAS(アンピシリン感受性)←ABPCが効く
レベル2→BLPAR(βラクタマーゼ産生アンピシリン耐性)←ABPC/SBTが効く
レベル3→BLNAR(βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性)←CTRXが効く
・セフェム系はグラム陰性桿菌に強い.
・COMS基準(経口置換条件)
Clinical improvement observed→臨床的に改善傾向
Oral route not complicated→経口ルートや腸管からの吸収が保証
Markers showing trends towards normal→検査値などのマーカーが正常化傾向
Specific indication→感染性心内膜炎, 骨髄炎, 髄膜炎などがない
・マクロライド系やテトラサイクリン系に関しては疾患と1:1対応で覚える.
【参考文献】
・ケアネットTV
【投稿更新日】2024/11/21