植込み型ループレコーダー(ILR/ICM)の適応と使い方|原因不明の失神・不整脈診断

【植込み型ループレコーダーとは】

  • 植込み型ループレコーダー(Implantable Loop Recorder:ILR)は、皮下に植え込むことで長期間の心電図モニタリングを行う小型デバイスで、植込み型心電図記録計(Insertable Cardiac Monitor:ICM)と言ったりもします。
  • 通常のホルター心電図では記録できない、数週間〜数か月に1回程度の不整脈を検出することが目的。
  • 日本での保険適応▶原因不明の失神および塞栓源不明の脳塞栓症(Embolic Stroke of Undetermined Source:ESUS)の患者における心房細動の検出
  • 失神の原因検索では、まず病歴、身体診察、起立時血圧、12誘導心電図などを評価します。
  • そのうえで、不整脈の可能性や発作頻度に応じて、ホルター心電図、外部心電図モニター、ILRなどを選択します。
  • 失神が繰り返されていても、必ずしも不整脈が原因とは限りません。反射性失神、起立性低血圧、神経疾患などとの鑑別が必要です。

【ILRの推奨Class】

classⅠ

  • 心原性失神を疑う臨床的特徴はないが、反射性失神あるいは起立性低血圧などの非心原性失神であることが否定的で、発作が不定期あるいはまれな原因不明の再発性失神の場合
  • 心原性失神を疑う臨床的所見を有するが、包括的な評価でも失神原因を特定できない場合
  • ESUSの患者で、Holter心電図を含む長時間心電図検査でも原因が同定されていない場合

classⅡa

  • 頻回に再発するか、外傷を伴う失神歴を有する反射性失神の疑いのある患者で、徐脈に対するペースメーカ治療が考慮される場合

不整脈性失神と非不整脈性失神の症状による鑑別

評価項目 不整脈性失神 非不整脈性失神
原因疾患の種類 徐脈性・頻脈性不整脈による心原性失神、反射性失神[おもに心抑制型]、てんかん性失神(ictal bradycardia/asystole)など 起立性低血圧、反射性失神(おもに血圧低下型)など
前兆(前駆症状)の特徴 動悸の自覚は心原性に比較的特徴的(上室・心室頻拍、徐脈頻脈症候群など)。反射性では、頭重感、嘔気、嘔吐、腹痛、心窩部不快感、眼前暗黒感など 反射性では、頭重感、嘔気、嘔吐、腹痛、心窩部不快感、眼前暗黒感など
誘因(感情、体位など) 心原性では労作との関連性もある。反射性失神は立位や座位での非体動時や環境要因・ストレスが影響する 起立性低血圧は立位時に発生する。反射性失神は立位や座位での非体動時や環境要因・ストレスが影響する
顔面蒼白 あり あり
意識消失時間 心原性失神や反射性失神では短く、1分以内が多い 1分以内が多い
痙攣の有無 しばしば認める(数秒〜15秒程度) 少ない
開眼の有無 開眼 開眼
自動症の有無 てんかんによる不整脈性失神ではしばしば まれ
膀胱洗浄・失見当識 てんかんによる不整脈性失神ではしばしば なし
咬舌 まれだが、失神では舌前面 まれだが、てんかん発作では舌側面
転倒・外傷部位 頭部・顔面 頭部・顔面

【植え込み方法】

1.植込み部位の決定

左前胸部の胸骨左縁付近の皮下に植え込みます。
多くの場合、胸骨左縁から約2cm外側、第4肋間付近を目安とし、胸骨に対して斜め45°程度の方向に留置します。
ただし、植込み位置や角度は使用するデバイスによって異なり、R波振幅や患者の体格などを考慮して調整します。

(chat GPTで作成)

2.局所麻酔・皮膚切開

植込み部位を消毒し、滅菌ドレープで覆った後、局所麻酔を行います。
付属の切開デバイスを用いて皮膚を切開する。

3.デバイス挿入

専用の挿入器具を使用して、ILRを皮下に留置します。

デバイスが浅すぎると皮膚びらんや突出の原因となり、深すぎると心電図の記録感度が低下する可能性があるため、適切な深さへの留置が重要です。

4.R波振幅の確認

植込み後には、プログラマなどを用いて心電図の記録状態を確認します。

特に重要なのは、R波振幅が十分に確保されているかという点です。

R波振幅が小さい場合、アンダーセンシングによる偽の徐脈・心停止イベントが記録される可能性があります。

また、T波のオーバーセンシングや筋電位などによるノイズも確認します。

必要に応じて、デバイスの位置や向きを調整します。

5.創部閉鎖

デバイスの位置と心電図記録状態を確認した後、止血を行い、創部を閉鎖します。

創部閉鎖には、縫合、皮膚接着剤、創傷閉鎖テープなどが使用されます。

閉鎖方法はデバイスの種類や施設の方針によって異なります。

【植え込み後】

植込み後には、以下の設定を行います。

設定項目 内容
Brady検出 設定心拍数以下の徐脈を検出
Pause検出 一定時間以上の心停止を検出
Tachy検出 設定心拍数以上の頻拍を検出
AF検出 心房細動が疑われるイベントを検出
症状時記録 患者自身が症状出現時に心電図を保存
遠隔モニタリング 記録されたイベントを遠隔で確認

※設定可能な項目や検出アルゴリズムは機種によって異なります。

【外来での指導料について】

2026年度(令和8年度)の診療報酬では、以下のように規定されています。

項目 内容
診療報酬コード D210-3
名称 植込型心電図検査
点数 90点/30分またはその端数
解析費用 検査料に含まれる
施設基準 所定の施設基準を満たす必要あり
算定対象 植込み期間ではなく、実際に心電図が記録された時間

30分以内なら90点、31分を超えると30分ごとに30点追加という形。

※記録波形が全くない場合は加算を算定できない

抜去のタイミング

  • 2-5年で電池寿命を迎えるためそのタイミングで抜去する。
  • また、失神の原因となる不整脈イベントが記録された場合も抜去する。
  • 抜去については専用ツールはないため、小切開で抜去する。

【ポイント】

  • 3秒以上の心静止を伴う失神もしくは失神はないが6秒以上の心静止が認められた場合はペースメーカ植え込みが望ましい。

【参考文献】

  • EP大学, 小竹康仁, 永嶋孝一, 岸原淳(2023) 『最新!心臓デバイス攻略本』メディカ出版
  • メドトロニックサイト(https://www.medtronic.com/jp-ja/healthcare-professionals/products/cardiac-rhythm/icm.html)
  • JCS  2022年度改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン

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循環器内科医 / 不整脈専門。 カテーテルアブレーションやCIED診療を中心に循環器診療に携わっています。 研修医・医学生・若手の先生が少しでも循環器のことに興味を持ってもらえたら幸いです。