ペースメーカー植込みの手順と注意点|術前準備からリード留置・術後管理まで

【ペースメーカ植え込み前の準備】

① ペースメーカーの適応・モードを確認する

まず、徐脈の原因と症状を評価し、ペースメーカー植込みの適応を判断します。

代表的な対象疾患は以下のとおりです。

  • 洞不全症候群(Sick Sinus Syndrome:SSS)
  • 房室ブロック(Atrioventricular Block:AVB)
  • 徐脈性心房細動(Bradycardic AF)

症状、徐脈との関連、可逆的原因の有無、基礎心疾患、心機能などを総合的に評価します。

植込み適応が決まったら、心房・心室のどちらにペーシングが必要か、房室同期を維持する必要があるかを検討します。

② 術前に確認する項目

  • 心電図:基礎調律、房室伝導、QRS幅
  • 心エコー:LVEF、心腔サイズ、弁膜症、三尖弁逆流
  • 血液検査:血算、腎機能、凝固系、炎症反応など
  • 胸部X線:心拡大、肺野、既存デバイスの有無
  • 感染徴候の有無
  • 抗凝固薬・抗血小板薬の内服状況
  • 既存の血管内デバイス、透析シャント、静脈閉塞の可能性

特に、LVEFが低下している症例や高率の心室ペーシングが予想される症例では、通常の右室ペーシングだけでなく、CRTや刺激伝導系ペーシングの適応も検討します。

③ 抗凝固薬・抗血小板薬の管理

ペースメーカー植込みにおける代表的な出血性合併症は、デバイスポケット血腫です。

ポケット血腫は、疼痛や入院期間延長だけでなく、デバイス感染のリスクにも関連します。

抗血栓療法は、血栓塞栓リスクと出血リスクを考慮して調整します。

  • ワルファリン:高血栓リスク症例では、治療域内で継続する戦略が選択されることがある
  • DOAC:継続または短期間休薬を、腎機能・出血リスク・施設プロトコルに応じて判断する
  • 抗血小板薬:PCI後の期間やステント血栓症リスクを踏まえて調整する
  • ヘパリンブリッジ:ポケット血腫を増加させるため、原則として安易に行わない

当院では基本は術前の休薬は行っていないが、術中の出血傾向などをみて短期間休薬を行うことはある。人工弁でワーファリン内服中などは原則休薬しない。

④ 感染予防

CIED感染は、デバイス抜去を要することもある重要な合併症です。

植込み前には活動性感染の有無を確認し、原則として感染がコントロールされてから待機的手術を行います。

術前の予防的抗菌薬投与、適切な皮膚消毒、無菌操作、確実な止血が重要です。

【リードの選択と留置部位】

① 右房リードの留置部位

右房リードの代表的な留置部位は、右心耳と右房中隔です。

右心耳(Right Atrial Appendage:RAA)

従来から広く使用される留置部位です。リードの固定性が得られやすく、特に受動固定リードの留置に適しています。

ただし、右心耳壁は薄いため、過度なリード操作や固定操作による穿孔に注意が必要です。

右房中隔(Right Atrial Septum)

能動固定リードによって選択できる留置部位です。

右心耳とは異なる心房興奮様式が得られますが、臨床的な優位性が一律に確立しているわけではありません。解剖学的位置、固定性、電気的指標を踏まえて選択します。

② 右室リードの留置部位

従来の右室リード留置部位として、右室心尖部と右室中隔が挙げられます。

留置部位 特徴 注意点
右室心尖部(RVA) 留置しやすく、安定した電気的指標が得られやすい 長期の高率右室ペーシングによる同期不全、心機能低下
右室中隔(RVS) 心尖部以外の選択肢 透視のみでは中隔と自由壁の判別が難しい場合がある
His束ペーシング(HBP) 生理的な刺激伝導系の捕捉を目指す 閾値、センシング、留置の難易度
左脚領域ペーシング(LBBAP) 左脚領域の刺激伝導系捕捉を目指す 中隔穿通、捕捉確認、リード深度の評価

右室中隔に留置したつもりでも、実際には右室自由壁に位置していることがあります。

そのため、正面像だけでなく、RAO・LAOなど複数方向からの透視評価が重要です。

③ スクリューインリードとタインドリード

リードの固定方法は、大きく能動固定と受動固定に分けられます。

スクリューインリード(Active fixation lead)

先端のスクリューによって心筋に固定するタイプです。

  • 留置部位の自由度が高い
  • 心房中隔や右室中隔などにも使用できる
  • 固定操作時には心穿孔に注意が必要
  • リード抜去の難易度は植込み期間や癒着などにも依存する

タインドリード(Passive fixation lead)

先端のタインが心内の肉柱などに引っかかることで固定されるタイプです。

  • 右心耳や右室心尖部などで使用される
  • スクリュー操作が不要
  • 留置可能な部位が解剖学的構造に制限される
  • 長期留置後の抜去難易度は癒着などによって変わる

どちらのリードが常に優れているというわけではなく、留置部位や患者背景によって使い分けます。

※開心術後の場合は心膜・胸膜の癒着で心臓穿孔のリスクが低く、右心耳留置も困難であるため、心房リードにスクリューインリードが使用される。

【ペースメーカ植え込み手順】

Step1. 静脈走行の確認

留置予定側の上腕を駆血し、造影を行い血管走行を確認する。
方法:造影剤3mlを先に入れて、その後に生食10mlで後押しする。

確認するポイントは以下のとおりです。

  • 静脈の走行と深さ
  • 鎖骨・第一肋骨との位置関係
  • 静脈の狭窄・閉塞
  • 周囲の動脈との位置関係

※胸膜外穿刺部位について

第一肋骨:穿刺部位が鎖骨に近すぎると肋鎖靭帯を貫通しリード損傷の原因となる。ただし、胸郭に近いため、血管の位置は術中に移動しにくい。

第二肋骨:近くを走行する胸肩峰動脈の誤穿刺に注意が必用。

Step2. 皮膚切開

切開部位は、ジェネレータの大きさ、静脈アクセス、皮膚の厚さ、鎖骨や肩関節との位置関係を考慮して決定します。

皮膚トラブルを避けるため、鎖骨と上腕関節から一定の距離をあける。

鎖骨の1-2横指下側、上腕関節部の2-3横指内側あたりを切開する。

3横指程度切開する(ICDなどは大きく切開する必要あり)。

穿刺する静脈に沿うように切開することで広範囲に静脈アプローチできるようになる。

切開は尖刃で1回でできるだけ切るようにする。

Step3. デバイスポケットの作成

基本は大胸筋膜下に作成する。

※皮下の場合は脂肪層内に作製するため、皮膚からの距離が短く、皮膚壊死や感染を起こしやすい。それと比較し、大胸筋膜下の場合は脂肪層と大胸筋層の間にある大胸筋膜に作製するため、剥離が容易であり、感染にも強い(脂肪組織が感染バリアとなる)。

※大胸筋層だと出血が多くなる。

剥離は電気メスの凝固もしくは用手的に行う。

開創器で創部を開いて行う。電気メスで少しずつ広げていき、大胸筋膜が見えるところまで剥離する。ポケット作成の際はセカンドに筋鈎で広げてもらいながら、剥離していく。その際に局所麻酔を追加すると良い。

ポケット作成時には以下が重要です。

  • ジェネレータが無理なく収まる大きさにする
  • 不必要に大きな死腔を作らない
  • 確実な止血を行う
  • 皮膚や皮下組織への過度な緊張を避ける

Step4. 静脈穿刺

第一肋骨内側と外側の間を狙って刺していく。

  • 外側の頂点よりも静脈が頭側を走行→走行はおそらく深いため、少し立て気味に
  • 外側の頂点よりも静脈が足側を走行→走行はおそらく浅いため、少し寝かせ気味に

2本穿刺し、外側を右室リード、内側を右房リード用に使用する。

穿刺部の間隔は0.5cm以上とる。

Step5. シース留置

シース留置の際には太いシースをいきなり刺してしまうと肺などにさしていた場合に気胸が悪化する可能性が高いため、最初は4Frシースで穿刺(穿刺針も細い)。

その後、太いFrのガイドワイヤに交換してから、太いFrのシースを挿入する。

蛇行が強い場合は深呼吸してもらうと通過することが多い。

第一肋骨アプローチ時に強い抵抗を感じた場合は肋鎖靭帯貫通の可能性があり再穿刺を考慮する。

Step6. 右室リードの留置

RVリードをもらって、スクリューチェックを行う。問題なければ、術者の代わりに2ndがリードをシースから出るくらいのところまで入るくらいまで挿入(スタイレットはシースに挿入した後に少し抜くこと=先端の穿通性を弱めるため)

①肺動脈にあげて右室に落とすパターン

U字型スタイレットを使って三尖弁を通過し、その後ストレート変えて心尖部付近にもっていく。
右房が拡大しているとU字からストレートにかえるときに右房にはね落ちることが多い。

②直接心尖部に入れるパターン

ピッグテール状のスタイレットを使用して行う。スタイレットを途中まで入れると小さな円を描くようにリードが自然に右室に跳ね上がる。スタイレットをさらに奥に入れるとリード先端が上向き、引くと下向きになる。

留置時のポイント

  • 複数方向の透視でリード先端位置を確認する
  • 心室壁への過度な圧迫を避ける
  • 適切なリードのたわみを確保する
  • 三尖弁への干渉やリードの過剰なたわみに注意する
  • 留置後に電気的指標を測定する
  • 心臓穿孔をさけるためリード先端は中隔側に向けること
  • 適時軽くたたいてトルクを解除すること
  • 留置できたら、たわみをつける。第2肋骨アプローチではより牽引されるため、大きくたわみをつける。

スクリューインリードを使用する場合は、リードごとの製品仕様に従って固定操作を行います。

Step7. 右房リードの留置

RAリードをもらい、スクリュータイプであれば事前チェックを行う。問題なければ、術者の代わりに2ndがリードをシースから出るくらいのところまで入るくらいまで挿入する。

U字のスタイレットを用いる。右房上部からそのまま押すとリードがストレートからUに代わりながら右心耳に入ることが多い。

右心耳に入ると心耳の拍動でワイパー運動をする.

右房上部は下部と異なり内腔が狭く、リードを自由に操作できない。一方で右房下部は内腔が広く、リード先端を右心耳に向けてリードを引き上げると自然に入る。

リードを素早く出し入れ(バイブレーション)するとリードが奥に押し込まれて固定が良くなる。

U字になるようにしっかりたわませる(押しすぎると下に牽引されて逆に抜けてしまう)。

位置が良さそうならデータチェック(閾値・波高値・抵抗値)を行う。

タインド:リード位置移動予防のため極力ねじれを起こさないようにする
スクリュー:右心耳上部は薄く、右心耳下部はリードが壁に垂直に当たるため避けたい。低位中隔が良い。

Step8. リード固定

術野の組織は浮腫を起こしているが、術後数日で改善するためリード刺入部に隙間ができて遅発性の皮下血腫になる可能性がある(特に支持組織が脆弱な場合)。

→リード周囲の大胸筋に4-0 PROLENEを用いてたばこ縫合を行い、隙間予防を図る。強く結びすぎるとリード損傷が危惧されるため、注意が必要である。

スリーブは大胸筋にかけた糸を一旦結んでからスリーブの結紮糸溝に結んでリードを固定する。

固定する際は垂れ下がるように固定してしまうとシステムが抜けてくることがあるため、スリーブの外側が頭側に持ち上がるように固定する方がよい。

固定が不十分だとリード脱落につながり、過度な結紮はリード損傷の原因となる可能性がある。

Step9. 創部止血

お湯で創部を洗い、出血している部位を電気メスで凝固する。

表皮については出血していても止血のため凝固はしないこと(創傷治癒遅延の原因に)。

Step10. 本体との接続

リードが血液汚染を起こしていると接続不良の原因となるため、濡れガーゼで拭ったのちに乾きガーゼで再度拭う。

※乾いていないと接続不良の原因となる。

接続前にトルクレンチをセプタムに挿入して空気を通しておく。リードを挿入して目視で確認した後にトルクレンチを締めて固定する。

対応するポートが分かりにくい場合はシリアルナンバーできちんと対応しているか確認すること。

接続後は再度、電気的指標を確認してもらう。

Step11. 本体の収納と固定

電池交換時に邪魔にならないようにリードをジェネレータの背部にしてポケット内に挿入する。

リードは無理な屈曲やねじれが生じないように収納すること。

挿入したジェネレータを大胸筋に固定する。

固定するときにスリーブ頭側の大胸筋に糸をかけると立位時にジェネレータがスリーブを巻き込むように牽引されてリードが抜けてしまうため、スリーブ尾側の適度に離れた位置に固定の糸をかける。

Step12. 閉創

閉創児のポイントは以下のとおりである。

  • 死腔をできるだけ減らす。
  • デバイスをしっかり閉じ込める。
  • 血流を確保して創傷治癒を促す。
  • 結び目(ノット)が皮膚に出ないようにすることである。

連続縫合→死腔が少なく、デバイスを閉じ込める力は強いが、阻血になりやすい。

単結紮縫合→1針ごとにノットを作製し結紮間が連続していないため、閉じる力は連続縫合より弱いが、血流を確保しやすい。

運針は組織の片側を下→上、対側を上→下にかけて、ノットを組織の下側に作製して皮膚に出てこないように注意する。

当院では4-0Polysorbを用いて連続縫合で2層縫合をしている。

1層目の創縁にノットを作製したら連続縫合し、反対の創縁まできたら運針を上の層にずらし2層目を縫い、1・2層目の糸でノットを作製する。

1層目→皮下(脂肪)組織をデバイスが目視できなくなるよう密に縫合する。

2層目→皮膚組織の真皮を寄せるように縫合する。

その後、V-Locというクロージャーデバイスを用いて表皮を寄せるように縫合する(3層目の役割)。

最後にステリストリップ(創傷閉鎖用テープ)を貼付する。

Step13. 保護

デバイス手術では有意な皮下血腫を起こすことは少なく、強く圧迫する必要はない。阻血になりすぎないように注意しながら保護する。

ハイドロゲル創傷被覆材(カラヤヘッシブ)を創部を覆うように貼付し、その上にフィルムドレッシング製剤(テガダーム)を貼付する。

ガーゼ20枚を10枚ずつで2つ折りで重ねるようにして、創部をテープで圧迫・固定する。

テープの固定の仕方は、当院では縦に1本、それより内側に向くように1本、最初の1本より外側に向くように1本、横に1本、最後に縦にもう1本貼って固定する。

【術後管理】

当院での経静脈ペースメーカ植え込みのパスでは以下の通りである。

術前日:血液検査、胸部X線、ECG

術当日:デバイス植え込み

術翌日:血液検査、胸部X線(リードの先端位置、たわみを確認)、ECG

術後3日:ガーゼ圧迫解除

術後6日:創部確認(カラヤヘッシブおよびテガダームを抜去)、デバイスチェック

な固定を一律に行うのではなく、創部状態とリードの安定性に応じて指導します。

ペースメーカー植込みに伴う合併症

以下の合併症に注意する。

合併症 主な原因・特徴 対応・予防のポイント
ポケット血腫 出血、抗血栓療法など 確実な止血、抗血栓薬管理
気胸・血胸 静脈穿刺時の胸膜・血管損傷 適切な静脈アクセス、画像確認
リード脱落 固定不良、牽引など 適切な固定、たわみの確保
心穿孔・心タンポナーデ リード先端による心筋損傷 過度な操作を避け、症状・心エコーで評価
デバイス感染 術中汚染、創部感染など 予防的抗菌薬、無菌操作、血腫予防
リード損傷 肋鎖間圧迫、屈曲、機械的ストレス アクセス部位の選択、リード走行の確認
静脈血栓・狭窄 経静脈リードに関連 症状・血管アクセス状況に応じて評価

 

【参考文献】

  • 草野研吾(2018)『不整脈デバイス治療バイブル-適応・治療・管理まですべてマスター-』南江堂

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nomomedic
循環器内科医 / 不整脈専門。 カテーテルアブレーションやCIED診療を中心に循環器診療に携わっています。 研修医・医学生・若手の先生が少しでも循環器のことに興味を持ってもらえたら幸いです。